新型モデル投入ラッシュのSUV 供給過剰でマーケットに異変も
自動車調査会社ケリー・ブルー・ブック(KBB)の幹部カール・ブラウワー氏は「リース契約が終わったSUVが増えれば、新車の価格設定にはさらに下落圧力が加わりそうだ」と指摘した。
予測調査会社オートフォーキャスト・ソリューションズのサム・フィオラーニ副社長は、もう少し楽観的。乗用車に対する消費者のニーズは細分化しており、SUVやクロスオーバー車市場が成長を続ければサイズ別や限定車、スポーティーなタイプなどを細かい区分で展開する余地が出てくるためだ。副社長は「市場はまだ飽和状態ではなく、満たされていないニッチなニーズはある。飽和状態になることを考え始めるのさえあと5─10年かかりそうだ」と述べた。
メーカー各社も、新モデルがひしめく中でも差別化はできるとの立場を維持している。
フォード・モーターのリンカーン部門責任者、ジョイ・ファロティコ氏は「新規参入も多いが、当社ブランドは他とは全く異なる見た目で違いを打ち出せる」と自信を見せる。同社は19年に中型の新SUV「アビエーター」を展開する予定で、競合他社では自己主張の強いモデルが多い中、「美しさと物静かさ」を感じさせるデザインだという。
だが、KBBのブラウワー氏は「車種が増えればそれぞれの販売台数が減るのは明白なのは簡単な計算で分かる。多くの車種が全て売り上げを伸ばすのは無理で、どれかは(シェアを)差し出さざるを得なくなる」と厳しい見方を示す。
ブラウワー氏が注目するのは、SUVやクロスオーバー車の平均価格。KBBによると、1台当たりの平均価格は17年が3万5991ドルで、前年比0.5%低下した。
成長の減速がみられる市場で競争が激化する中、メーカーは値下げで販売数量を稼ぎ出すことを迫られ、必然的に利益率が圧縮される結果となる。
ブラウワー氏は「3年前と同じ利益が出せるとは思わないほうがいい」と警告した。
(Nick Carey記者)
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら