習近平訪朝はなぜ米朝首脳会談の後なのか?──中国政府関係者を独自取材
内心、「しめた!」と思った。しかし間を置かずに、すぐさま「なぜですか?」と畳みかけた。
すると、「あれだけ互いを信頼していない米朝両国が、朝鮮半島の非核化と南北朝鮮の統一を実現することができるとでも思っているのか?」と答えてくれるではないか。勢いづいて、
「ということは、中国にしか、朝鮮半島問題を解決する力がないと考えているということなのか?」
とストレートに食い込むと、さすがに、この問いには直接は答えてくれなかった。しかし、「これは、個人の意見だが......」と最後に次のように「個人的見解」を述べてくれた。
「アメリカは、半島問題で中国が主導権を持つことを嫌がっている。そうでなくとも金正恩は真っ先に中国を訪問した。彼が外国を訪問するという行動に出て最初に会ったのが習近平なのだ。それだけで、トランプのメンツは十分に潰れている。だから中国はこれ以上、アメリカを追い詰めない方が賢明だ。われわれの長年の主張は米朝首脳会談だったので、それが実現しないような事態になってほしくはない。もっとも、トランプには半島問題を解決する力はないだろう。だからといって、習近平がトランプと力を合わせて半島問題を解決するだろうなどという期待は持たない方がいい。その時期はすでに過ぎてしまった。一時期は、その可能性があったが、今や無理だ」
なるほど――。
これで十分だ。
宋濤部長の訪朝を大々的に報道した北朝鮮の狙いは?
関西大学の李英和(リ・ヨンファ)教授が、4月18日付の北朝鮮の労働新聞は異様で、「宋濤訪朝団の記事ばかりで、おまけに大量の写真を使って大々的に報道している」と教えてくれた。
中共中央連絡部の宋濤部長が訪朝することの意味は、4月12日付けのコラム<北朝鮮、中朝共同戦線で戦う――「紅い団結」が必要なのは誰か?>で詳述した。
中朝双方にとって、今や両党の友好をアピールすることは双方それぞれの利益と深く関わっているが、このたび宋濤部長の訪朝を大々的に報道した北朝鮮の狙いは明らかだ。万一にも米朝首脳会談が決裂した場合、背後には中国がいることをアメリカに強く印象付ける目的があったものと解釈できる。
北朝鮮の核放棄に関するロードマップは、あくまでも「段階的」であり、「周辺(米韓)と歩調を合わせる」というものだ。米韓が北朝鮮への攻撃をせず、金ファミリー体制の維持を保障し、かつ朝鮮戦争の休戦協定(1953年)を平和条約に持っていくことなどが前提条件でもある。