中途半端だったシリアへのミサイル攻撃
ホワイトハウスが13日に出した報告書では、ソーシャルメディアで流された証拠や非政府組織(NGO)の声明、ドウマでの塩素ガスの使用を示す動画や写真が取り上げられている。
また、化学兵器攻撃があった際にシリア政府軍のヘリコプターがドウマ上空を旋回しているところが目撃されているとし、「これらのヘリコプターから樽爆弾が投下されたことは多数の目撃情報から裏付けられている。樽爆弾はシリア内戦を通じて、一般市民を無差別に狙うのに使われてきた戦術だ」とも指摘した。
複数の米高官は14日、塩素ガスがドウマで使われたことを確信しているだけでなく、サリンも使われたと見ているが、それを裏付けるだけの十分な証拠がないと語った。報告書では、現地で活動する医師や援助団体が「サリンに触れたと考えられる症状が見られたと伝えている」と指摘している。
米政府によればシリアは昨年、トランプが命じた1年前のミサイル攻撃にも関わらず何度も化学兵器を使用した。11月18日にはダマスカス近郊のハラスタで反体制派に向けてサリンを使ったとみられる攻撃も行われた。
米仏が挙げた証拠とは
アメリカとロシアは2013年9月、シリアの化学兵器をすべて廃棄させることで合意した。だが化学兵器禁止機関(OPCW)などの国際機関から派遣された査察官はすぐに、シリアが猛毒の神経剤であるサリンやVX、ソマンなどの申告義務を怠っていたことに気づいた。OPCWと国連は報告書で、シリア政府軍が塩素ガスやサリンなどを使用した事例が多数あったと断定。さらに、テロ組織ISIS(自称イスラム国)もシリアでの戦闘で化学兵器の1つであるマスタードガスを使用した、と結論づけた。
ヘイリーは4月13日の国連安保理の会合で、アメリカがシリアを攻撃した昨年4月以降に発生した複数の事例を含め、7年間にわたるシリア内戦で同国は最低でも50回は化学兵器を使用した、と主張した。フランスは攻撃の理由として、シリアが2017年4月4日以降に化学兵器を44回使用した、とする疑惑を挙げた。ほとんどの事例で塩素ガスが使われており、そのうち11回は仏当局が使用を断定した。仏情報機関は、2017年11月18日に東グータ地区ハラスタで「神経剤」が使われた、と確信している。
今回アメリカが限定的な攻撃にとどめた理由は2つある。1つは、米国防省が民間人の犠牲を最小限に抑えるために攻撃対象を絞ったから。もう1つは、ロシアと直接の交戦に発展するのを避けるため、ロシア軍兵士や戦闘機などを攻撃対象から外したからだ。
なにより、シリアが増強している化学兵器の製造能力を削るには、もっと徹底的な軍事作戦が必要だった。国連安保理の専門家パネルが最近まとめた内部報告書は、シリアは北朝鮮などから大量の物資を輸入して、化学兵器の製造能力を増強していると指摘したばかりだ。