東南アジアで相次ぐリゾート地閉鎖 中国人観光客など膨張で環境負荷が極限に
だが、同地域で競合する他の人気観光スポットは、こうした閉鎖で回ってくる観光客による収入増を手放しで喜んでいるわけではない。
タイ・プーケット島の観光当局責任者であるKanokkittika Kritwutikon氏は、島が「極限状態」にあると話す。同島では近年、特に空港を何度も改良し、処理能力を上回る利用客に対処しようとしてきた。
プーケットからあまり知られていない目的地へと観光を分散させるのが当局の政策方針だとKanokkittika氏は説明。「空路でやってくる観光客のほか、クルーズ船など海路で訪れる人もいる。プーケットにどれだけの観光客がいるか想像できるだろう」
観光客や温暖化でダメージを受けたサンゴ礁を保護するためのマヤ湾閉鎖は、タイでは2016年の10カ所の人気ダイビングスポットの閉鎖に続くものだ。これらダイビングスポットは、最大8割のサンゴ礁が白化しているとの国立公園局による調査を受けて閉鎖された。
また、タイ首都バンコクの南にあるパタヤも教訓を与えてくれる。
パタヤには1960年代から西側諸国の観光客が流入し始めた。ベトナム戦争の従軍兵士が休暇中に訪れるようになったのだ。その後、1990年代の建設ラッシュにより、絵のように美しかった漁村は怪しいナイトライフと高い犯罪率で知られる街へと変貌と遂げた。
タイ観光省は、今年の観光客数について、史上最高を記録した前年の3500万人を上回る3755万人と予想。昨年の観光客のうち、980万人は中国人だった。
遅すぎた閉鎖
ボラカイ島とマヤ・ビーチの閉鎖は「テストケース」となる可能性があり、人気ビーチリゾートを抱える他の諸国は注視するだろうと、シンガポールの大学テマセク・ポリテクニックのビジネススクール講師を務める観光学が専門のベンジャミン・カシム氏は指摘する。
インドネシアの非営利団体は、政府に対し、同国で最も人気のあるバリ島の「環境危機」に取り組むよう訴えている。同島には昨年、550万人以上が訪れた。
インドネシア当局は、バリ島の稲田をゴルフコースや別荘などに変える無計画な開発を許したとして長年批判を受けている。年に数カ月、ビーチは海から打ち上げられたプラスチックのごみでいっぱいになる。
にもかかわらず、ウィドド大統領は景色の美しい自国の他地域に10カ所の「新しいバリ島」建設を推進しようとしている。