最新記事

マクドナルドも熱い視線送る「昆虫農場」 世界のタンパク質危機を救うか

2018年4月24日(火)18時19分

4月13日、グローバルな人口増加と中間層の拡大により、タンパク質危機の懸念が増大。巨大食品企業は、動物用飼料、あるいは人間向けの食品への添加物として、収益性が高く持続可能な代替タンパク源を見つけようと、昆虫養殖産業に注目している。写真はミズアブの幼虫の餌。加ブリティッシュコロンビア州で3月撮影(2018年 ロイター/Ben Nelms)

バンクーバー郊外の倉庫に10段も積み上げられた大きなアルミ容器のなかで、ミズアブの幼虫が何層にも重なってうごめいている。固くなったパンや腐ったマンゴー、熟しすぎたマスクメロン、しおれたズッキーニが幼虫の餌だ。

だが、ここは生ゴミ廃棄場ではない。「昆虫農場」である。

続々と誕生しつつある昆虫養殖企業の1つ、エンテッラ・フィードは、昆虫を加工して、魚や家禽(かきん)のための飼料、さらにはペットフードまで生産する予定だ。肥育が完了したミズアブの幼虫は、炙って乾燥させ、袋詰めにするか圧搾して脂肪分を抽出したうえで粉砕し、ローストピーナツのような香りのする茶色の粉にする。

まだ小規模ではあるが、成長しつつある昆虫養殖産業は注目を集めており、年商4000億ドル(約43兆円)規模の動物用飼料産業における複数の巨大企業から出資を得るようになっている。たとえば、米アグリビジネス大手カーギル[CARG.UL]や、飼料や農場向け機械・サービスを提供するウイルバー・エリス、さらには穀物加工機械を製造するスイスに本拠を置くビューラーなどだ。

ファストフード大手マクドナルドも、大豆タンパクへの依存度を減らすため、養鶏飼料としての昆虫活用を研究している。

マクドナルドで持続可能なサプライチェーンを担当するマネジャーのニコラ・ロビンソン氏はロイターに対し、「この画期的な取り組みは現在、概念実証の段階にある」と語った。「今のところは心強い結果が出ており、われわれは今後の研究に支援を続けることを約束している」

こうしたグローバル規模の巨大食品生産企業が昆虫に注目しているという事実は、動物用飼料、あるいは人間向けの食品への添加物として、収益性が高く持続可能な代替タンパク源を見つけることに彼らがどれだけ努力しているかを示している。昆虫は、主要な農業企業によって研究・開発が進められている代替タンパク源の1つにすぎない。これ以外にも、エンドウ、キャノーラ(菜種)、藻、バクテリア由来のタンパク質がある。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB

ビジネス

米中古住宅販売、10月は3.4%増の396万戸 

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、4
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中