マクドナルドも熱い視線送る「昆虫農場」 世界のタンパク質危機を救うか
グローバルな人口増加と中間層の拡大により、1人あたりの肉消費量は過去40年間で50%増大し、タンパク質危機の懸念が増大した。必須の主要栄養素であるタンパク質の従来の供給源は、グローバルな気候変動と、条播(じょうは)作物農業と商業漁業が環境に与える影響が懸念されるなかで、ますます信頼性が低下している。
カーギルの動物栄養事業の戦略・テクノロジー部門を率いるベノイト・アンクティル氏は、新たなタンパク源の開発を「長期的な機会」と呼ぶ。
「持続可能なタンパク源は重要な課題であり、だからこそカーギルでも、世界的な栄養供給ソリューションの一環として昆虫の有効性を評価しつつある」とアンクティル氏は言う。
生活水準が向上していくと、食生活が穀物・植物中心から肉中心の食事へと変化していく。問題は、食肉需要が拡大する場合、飼料の生産はそれを上回るペースで成長する必要がある、という点である。1ポンドの鶏肉を生産するには、通常約2ポンドの飼料が必要になる。豚肉の場合は4ポンド必要だ。
数十年にわたって畜産・家禽用飼料の基礎となっていた大豆の増産は長期的なソリューションにはならない。森林消失と強力な農薬の過剰使用を促してしまうからだ。
さらに、天然の魚介類や魚介副産物から製造される水産養殖飼料である魚粉の供給も、気候サイクルや乱獲、さらには乱獲防止の規制によって大きく変動する。
栄養学者や科学者は、持続可能で低コストのタンパク源として人間の昆虫消費を提唱してきた。だが、多くの国・文化の人々にとって、虫を食べるというのは耐えがたい発想である。しかし、食物連鎖のもっと下位の部分で昆虫由来のタンパク質を導入するのであれば、より受け入れやすい。
昆虫養殖事業は、まだいくつかのハードルを越えなければならない。たとえば、動物に飼料として与えることに対してさえ嫌悪感が見られる。また、粉末化した昆虫を用いることで食品供給に新たな有毒物質が入り込まないことを規制当局に納得させる必要がある。
シアトル・タコマ空港に近い車体修理工場の上でミールワーム(ゴミムシダマシ科甲虫の幼虫)の養殖を行っているベータ・ハッチのバージニア・エメリー最高経営責任者(CEO)は、「食品システムのなかで、虫は汚物と考えられている」と話す。