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「北極シルクロード」争奪戦は中ロが先行中

2018年4月23日(月)12時05分
キース・ジョンソン、リード・スタンディッシュ

北極海経由のエネルギー貿易はロシアと中国の絆を強化している。中国は120億ドルを投じてヤマルLNGプロジェクトを支援しており、ロシア産LNGの大口顧客になる見込みだ。北極海航路は、人口の集中する北東部をはじめ中国の大規模な天然ガス需要に対応するのに役立つだろう。さらに、この航路を使えば海賊行為が横行するマラッカ海峡も通らずに済む。

「クリミア併合以降、状況は一変した」と、キイスキーは言う。「ロシアは北極海航路を自国の輸出ルートにし、中国との関係を強化したがっているようだ」

中国は北極海航路を「北極シルクロード」と呼び、習近平(シー・チンピン)国家主席が提唱する数兆ドル規模の広域経済圏構想「一帯一路」と結び付けている。「北極シルクロードは一帯一路の一部となって、これまで以上に重視されている」と、コンリーは言う。

一方、アメリカは出遅れている。オバマ前政権下で北極が注目を浴びたのは気候変動絡み。トランプ政権はアラスカ沖の北極圏海域でのエネルギー開発を推進する以外、北極を優先課題とはしていない。「誰も緊急課題と考えておらず、予算もない」と、コンリーは言う。「その隙にロシアと中国は北極での利権と活動を拡大する一方だ」

アメリカが北極の重要性に気付く頃には、もう手遅れかもしれない。

From Foreign Policy Magazine

<本誌2018年4月24日号掲載>

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