ファーストレディーに挑戦した安倍昭恵 リスク恐れぬ行動で「渦中の人」に
矛盾する思想
こうした革新的な言動から昭恵氏は「家庭内野党」とも呼ばれ、安倍晋三首相のタカ派的なイメージをやわらげるのに一役かってきた。
他方、夫である安倍首相の保守的な政治的スタンスと同じような姿勢を取ることも多い。
中国と韓国が過去の日本の軍国主義の象徴とみなす靖国神社に参拝したこともある。安倍首相は2013年12月に一度靖国に参拝したが、それ以来、行っていない。
森友学園をめぐる問題が明らかになる前、昭恵氏は森友学園が開校しようとしていた小学校の名誉校長を務めていた。また、教育勅語をカリキュラムに取り入れた同じ経営者の幼稚園も訪問している。
昭恵氏を知る人は、こうした彼女の一見矛盾する思想に基づく言動は驚くにあたらない、という。豊永氏は「彼女は理論で行動するのではなく、好きかきらいか、という感覚で行動する」との見方を示した。
今月になって森友問題が再燃してから、昭恵氏はこの問題に直接コメントはしていないが、福祉をテーマにしたイベントに出席し、難病を抱える男性との対談の中で「私も過去を後悔したり、反省したりするが、後悔したり、先に起こることを心配したり、恐れたりするのではなく、日々の瞬間を大切にしたい」と語ったことがメディアで取り上げられた。
こうした言動は、自分が置かれている状況を理解していないのではないか、との批判を招いている。
森友学園の土地取引に関わった近畿財務局職員が自殺した可能性で、当局が捜査中と報道された3月9日夜、昭恵氏は芸能人の主催するパーティーに出席していたと一部で報じられた。昭恵氏の写真がこの芸能人のインスタグラムにアップされたが、その後削除されているという。
同じ日にまた、昭恵氏は国際女性デーのアートイベントに出席し、笑顔の自身の写真をフェイスブックにアップした。これに対し一般の人から「能天気」との書き込みや、「人殺し」とまで表現した書き込みが見られた。一方、彼女を支持するメッセージも多くあった。
スポットライトのあたる場所は少し避けたほうがいいのでは、と昭恵氏に助言する人もいる。
保守的なメディアとされる産経新聞の田北真樹子記者は20日付のコラムで「昭恵氏は多くの人が認める魅力的な女性である。従来の『首相夫人』の枠にはまらない自由な生き方は多くを魅了する」と書いた。
「しかし、いま、政権は窮地に立たされている。昭恵氏の不用意な言動は政府与党内だけでなく安倍首相を支持する層にも疑問符を広げ、政権の脚を引っ張りつつある」と指摘し、最後にこう締めくくった。
「首相夫人に対して大変僭越(せんえつ)ながら、ここは行動を自粛なさってはいかがだろうか」。
(リンダ・シーグ 翻訳:宮崎亜巳)
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら