最新記事

修理職人

「使い捨て文化」に戦いを挑む修理職人のネットワークが世界に広がっている

2018年3月22日(木)18時30分
松丸さとみ

ベルリンの修理カフェ Tobias Schwarz-REUTERS

<使い捨ての消費文化に対抗しようとしている世界的なネットワーク「修理カフェ」の活動が世界に広がっている>

ゴミ問題やCO2問題に修理という解決策

壊れたら買い換える、「使い捨て文化」という言葉が使われるようになってから久しい。しかしそれに伴い、ゴミの問題も指摘されるようになった。世界銀行が2012年に発表した数値によると、世界的に私たちは1日1人あたり1.2キロのゴミを出しており、2025年にはこれが1.42キロに増えると予測されている。

英紙ガーディアンによると、英国で2016年にゴミ廃棄場に捨てられた衣類は30万トンに上り、英国での衣類の平均使用年数は3.3年だった。また、ゴミとして捨てられる電子機器や電気製品は、2018年末には世界で5000万トンに達すると予測されているという。

こうした使い捨ての消費文化に対抗しようとしている世界的なネットワークがある。「修理カフェ」だ。壊れたものを持ち込むと、ボランティアの人たちが無料で修理してくれる。ヘアアイロン、掃除機、ラップトップなどの電気製品から、ダイニングチェアなどの家具、ジーンズなどの衣類と、対象はさまざまだ。

公式ウェブサイトによると、修理カフェ第1号店が生まれたのは2009年、オランダのアムステルダム。現在は非営利団体の「リペアカフェ・ファウンデーション」として、世界に1500店の修理カフェを抱える(常設ではなくイベントとして運営しているところが多いようだ)。

修理さえすればまだ使えるという物を直して使うと、ゴミを減らす以外にも利点がある。新製品を作るために必要となる原材料やエネルギー、二酸化炭素排出を減らしたり、廃棄されたものをリサイクルする際に出る二酸化炭素の排出を減らしたりできるのだ。

ガーディアンによると、英国ロンドンの郊外に位置する都市レディングにある修理カフェでは、同紙が取材したこの日だけで、ごみになるはずだった品物24キロが修理によって復活し、284キロの二酸化炭素排出を防いだという。

地域社会の活性化も

英国北アイルランドの首都ベルファストに修理カフェ1号店ができたのは2017年後半。BBCによると、今年2月に行われた修理カフェのイベントでは、15人のボランティアが修理専門家として働いていた。ここで自転車修理工として活動していたビクター・ヘンリケズさんは、「自分たちが住んでいる使い捨て社会を何とかするため」に参加を決めたという。「自転車を買っても、パンクしたりチェーンが切れたりするとそれで捨ててしまう。私にしてみたら馬鹿げた話だし、環境にやさしくない」とBBCに話した。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRBの独立性強化に期待=共和党の下院作業部会トッ

ビジネス

現代自、関税対策チーム設置 メキシコ生産の一部を米

ビジネス

独IFO業況指数、4月86.9へ予想外の上昇 貿易

ワールド

カシミール襲撃犯「地の果てまで追う」とモディ首相、
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負かした」の真意
  • 2
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学を攻撃する」エール大の著名教授が国外脱出を決めた理由
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考…
  • 6
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 7
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 8
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「iPhone利用者」の割合が高い国…
  • 10
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 7
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 10
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中