音やリズムが脳と心を刺激し、豊かな感性を育み、表現力を養う
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30年以上前に国立(くにたち)音楽院が開発した幼児リトミック。子どもの心身の発達を促す効果がある音楽教育手法として、現在では全国のカルチャーセンターなどで展開している。
リズムをテーマにした音楽教育のメソッド
教室にはアップテンポなピアノの演奏が流れ、その音色やリズムに合わせて幼児たちが楽しそうに体を動かしている。自由な音楽の世界の中で、歌ったり飛び跳ねたりしている我が子を見守る母親の表情からも、思わず笑みがこぼれ出す。ここで行われているのは、幼児リトミックと呼ばれるもので、一般的な音楽教室や学習教室での授業とはまったく異なる。
リトミックとは、スイスの作曲家・音楽教育家であるエミール・ジャック=ダルクローズが提唱した音楽教育の手法のことで、ギリシャ語でリズムを意味する。これを幼児教育に取り入れ、日本で初めて幼児リトミックを考えたのが、1985年に東京で創設された国立音楽院である。同音楽院の創設者であり理事長を務める新納重臣氏は、生後4ヵ月くらいの赤ちゃんがピアノの音に反応し、母親の膝の上で嬉しそうに手足を動かしている姿を見て次のように思った。人間の個性や能力が形成される敏感な乳幼児期にこそ、音楽やリズムを体感させ、心身の調和を図ることが大切なのではないか。
1981年に出版された黒柳徹子氏の『窓ぎわのトットちゃん』にも、同氏が受けたユニークな教育としてリトミックが紹介されている。この本が出版された頃、新納氏はすでに幼児教育と音楽を結ぶ構想を抱いていた。この本の中に"リトミック"という言葉を見つけた際にひらめき、"幼児リトミック"というネーミングが誕生したのだという。
心と体で感じることでさまざまな力を育む
子どもの潜在能力は、幼稚園に入る前の3歳くらいまでに8割以上が形成されるといわれている。幼児リトミックは、この大切な時期に楽しい音楽体験を通じて、豊かな感性を育み、表現力や創造力などを養おうというものだ。乳幼児は言葉では理解することが難しい内容でも、音楽やリズムが奏でるメッセージを敏感に感じることができる。実際のレッスンでは、タンバリンを叩いて講師と挨拶をしたり、ピアノの音に合わせて体を動かしたり、親子でダンスをしたり、さまざまなメニューを実施。フープやボールといった道具類も効果的に使われている。