南北首脳会談に動き出した朝鮮半島、米朝対話は実現するか
「北朝鮮は決して認めないだろうが、彼らはアメリカを少し挑発しすぎて危険な状況に陥りつつあることを懸念しており、それがこの変化の一因ではないか」と、2000年代初頭に在北朝鮮英大使館の開館に尽力した元外交官のジム・ホーアは言う。
一方トランプ政権側は、冬季オリンピックでマイク・ペンス副大統領が北朝鮮代表の金栄南最高人民会議常任委員長との握手を拒絶するという外交的なミスを犯した後、我に返ったようだとホーアは指摘。そのせいで今、北朝鮮との対話のチャンスに対して以前よりわずかながらオープンな姿勢になっているように見えるという。
この計画的な「冷たい挨拶」は「双方による強がり」が招いた結果だと、シンクタンク、国際戦略研究所アメリカ支部のマーク・フィッツパトリック事務局長は言う。「制裁が北朝鮮経済をますますひっ迫させるなか、北朝鮮側が、大統領よりも下位レベルでの会談につながるような譲歩を提案してくる可能性もある」
だがトランプが突き付けた非核化という条件については「北朝鮮側が検討することはほぼあり得ない」とホーアは言う。より現実的なのは北朝鮮が核兵器や特定の原料の生産に上限を設けることに同意するという、1994年の米朝枠組み合意に近いものだろうと彼は言う(同合意でアメリカは北朝鮮から、原子炉の建設を凍結する合意を取りつけた)。
対話実現には数々の障害
米朝間の合意には、北朝鮮に対する制裁の緩和が伴う可能性がある。国連、アメリカと欧州連合(EU)はいずれも、核弾頭を搭載でき米本土に到達可能な大陸間弾道ミサイルの開発を推し進めるなか、2017年に繰り返しミサイル発射実験を行ったことを理由に、北朝鮮に制裁を科している。
「北朝鮮側が主張するように、彼らはこれらの兵器の開発で大きな進展を遂げているため、我々が望み得る最大の合意は計画の凍結だ」とニルソンライトは言う。
だが、北朝鮮の核に何らかの上限を科せば、必然的に彼らが核兵器を保有していることを正式に認めることになる。ならず者国家に国際舞台でより大きなステータスを与えることは、とくに周辺諸国にとって最も望ましくないことだ。
今回、平壌で開催された南北会談から、金政権が核開発計画をはじめとする重要な問題において、どれだけ譲歩する意思があるかが判明することが期待されている。
「北朝鮮にどこまでの提案をする意思があるのか、まだ分かっていない。南北朝鮮の対話によって、もしかしたらその点について明確な情報が幾らか引き出されるかもしれない」とニルソンライトは言う。