トランプ信者が外交トップへ CIA長官から国務長官になるポンぺオの横顔

3月13日、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との前例のない首脳会談を準備する中で、次期米国務長官に指名されたポンぺオCIA長官(写真)には、トランプ大統領が聞きたがるような意見しか言わない傾向があると、政府関係者やアナリストが危惧している。2017年、ワシントンにある国務省ビル(2018年 ロイター/Joshua Roberts)
マイク・ポンペオ米中央情報局(CIA)長官は、重要な国家情勢のブリーフィングを毎朝行い、公の場では称賛し、北朝鮮からイランに至るさまざまな問題についてその強硬路線を支持することにより、トランプ大統領との個人的な絆を育んできたのかもしれない。
だが、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との前例のない首脳会談を準備する中で、次期国務長官に指名されたポンぺオ氏には、大統領が聞きたがるような意見しか言わない傾向があると、政府関係者やアナリストが危惧している。
一方、元共和党下院議員であるポンぺオ氏の支持者らは、解任されたティラーソン国務長官の後任として上院の承認を得たなら、大統領の信頼、政府での経験、議会や官僚機構の内部知識といった強みを、米国の外交トップという新たな役割で生かすことができる、と主張する。
また、ティラーソン氏はトランプ大統領と意見が対立することが多かったが、大統領とウマが合うこともポンペオ氏にとっての強みになるだろう。海外の指導者からも、大統領の代役として信頼性が高いと受け止められる可能性が高い。
とはいえ、大統領に忠実なタカ派のポンペオ氏が、トランプ政権の外交姿勢をさらに強硬にすることで、より穏健な意見が大統領執務室で表明されにくくなり、北朝鮮を相手とするデリケートな外交努力を困難にするのではないかとの懸念も残る。
ポンペオ氏の知性や、より堅実な秘密諜報作戦を主張する点に好印象を抱いている情報機関の当局者もいるが、一部からは、ポンペオ氏が直接大統領に行うブリーフィングを利用して、ありのままの評価ではなく、恣意的に選択した情報を提供してきたとの声も上がっている。
例えば、ポンぺオ長官は、2016年の米大統領選に対するロシアの介入に関する情報機関の調査結果を軽視し、イランが2015年の核合意を遵守していることよりも、同国のミサイル開発や中東地域における複数の紛争での役割を強調する傾向があった、と一部当局者は語る。
「ポンペオ氏は、記憶にある限り、最も政治的なCIA長官だった」と政権当局者は匿名を条件に語った。「CIA内部の多くの専門家のやる気をそぐような形で、政治的案件に首を突っ込んでいった」
「同省のモラルも打撃を受けおり、それは分析部門から広がり始めた。ここの職員のなかには、ポンぺオ氏が、情報機関がどう評価しているかではなく、トランプ氏が何を聞きたがっているかに合わせて、PDB(大統領向けデイリーブリーフィング)の一部を調整しているのではないかと懸念する声もあった」と同当局者は語った。
だが、国務長官に昨年抜擢された時点で政治経験がなかったビジネス界出身のティラーソン氏とは異なり、ポンペオ氏は中央政界の流儀をよく心得ている。
54歳のポンペオ氏は、保守的な傾向も幸いして、連邦議会やホワイトハウスとうまくやっていける可能性が高いと現旧当局者はみている。