トランプが世界に放つ「異常」関税、専門家が見る5つの論点
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3月5日、米国に輸入される鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を課すトランプ米大統領(写真)の計画は、世界的な反発を呼んでいる。ワシントンで2月撮影(2018年 ロイター/Jim Bourg)
米国に輸入される鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を課すトランプ米大統領の計画は、世界的な反発を呼んでいる。
では、こうした特定の関税を課すことが、なぜ貿易専門家の間で論争の的となっているのだろうか。
●全ての国が対象に
特定の国々から「投げ売り」あるいは不当に助成された輸入品に対して米国が頻繁に課す報復関税とは異なり、トランプ氏の鉄鋼・アルミへの関税は全ての国に適用される。
これらは「セーフガード」的な関税であり、ある特定の産業に深刻な損害を及ぼしかねない突発的な輸入の急増を阻止するための緊急輸入制限措置である。これに対し、米国の鉄鋼・アルミ業界はそのような脅威に直面していないとの批判もある。
トランプ氏が提案する関税は広範囲に及ぶ鉄鋼・アルミ製品を対象としており、強硬な姿勢がうかがえる。
●法的な異議申し立ては困難
緊急輸入制限は世界貿易機関(WTO)協定で認められている合法的な措置。だが、それに対するチェック機能は弱い。
同措置を講じる際は、主要な供給国に対して補償も提供する想定だった。それは元々、輸入制限措置を講じる国が、経済的影響のバランスを取るため他の製品の関税を引き下げることを意味していた。昨今では 多くの関税はすでに低いため、これには以前ほどの実効性がない。
したがって、影響を受ける国は、米国からの輸入品に関税を課したり、他の措置を講じたりすることによって補償を獲得しなくてはならない。だが、3年間はそうすることが許されていない。
もしWTOに提訴した場合、補償を受ける権利を失いかねず、何年にも及ぶ法廷闘争が始まるだけかもしれない。仕返しのため認められていない措置に出るなら、報復合戦に突入する恐れもある。