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ジャーナリスト堀潤氏が『猿の惑星』から読み取った「民主主義の危機への警鐘」とは

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2018年2月14日(水)11時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ 広告制作チーム

ジャーナリスト堀潤氏が『猿の惑星』から読み取った「民主主義の危機への警鐘」とは

© 2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

──オリジナルシリーズもリブート三部作も、SF の要素だけではなく、人種差別や階級の対立など、その時代の社会状況とリンクするような形でメッセージが込められています。

堀:僕が注目したのは「人が喋れない」という要素です。オリジナルの『猿の惑星』の世界観も人間が喋れないというものでした。言葉を話すというのは文明そのもので、特に民主主義社会では私たちが理想や意見を発信することが進歩やイノベーションの根源ですよね。人が喋れなくなる状況に至るまでのリブート三部作を観て、社会のありよう、民主主義とは何なのかということについて大いに考えさせられます。

原因はこれだったのか、まさに自分たちで言葉を失っていったのだという。今の社会風潮と確かにリンクしています。インターネットやSNSができて誰でも発信できるのに、誰もが発信するのが窮屈な時代。コミュニティの中ではこうあるべきだという価値観の押し付けが、発信に制限をかけている状況です。

民主主義の対義語は、「沈黙」だ

──コミュニティや組織に関連して、『聖戦記』は分かりやすい形で『地獄の黙示録』への言及がありましたよね。軍隊を率いる大佐という独裁者のキャラクターが、ジャングルに独立王国を築いたカーツ大佐と重なります。日本の組織に引き寄せて考えると、個人よりも組織優先という体質が、ブラック労働や不正の隠蔽といった日本的な組織の諸問題の根源にあると思いますが、その点についてはいかがでしょう。

堀:民主主義の対義語は、一般には独裁や専制政治、君主制と言われますが、僕は「沈黙」だと考えています。独裁者がいなくても、沈黙を強いる、あるいは沈黙が生まれる雰囲気、誰かの大きな声や意思が物事を決定し、異論や反論の声を上げさせない空気というのは、統治をする側にとっては非常に都合がいい。だからこそひとりひとりが自由に発言し、それぞれの発信を他人が否定することなく許容することが大切なのです。

『聖戦記』を観て、言葉が喋れなくなるという点にその意味を見出したし、どうすれば沈黙を強いる空気を打破できるのかを考えさせられます。私たちが身近なところで実行できることがあるとすれば、発言した人を支えるということ。自分が疲れていて発言できない、行動できないこともあるでしょう。そんな状況でも、誰かが行動しようとした時には、その人の行動や発信に関しては最大限支える意思を表明しましょう。その積み重ねだと思います。去年は「忖度」という言葉が流行しましたし、「#MeToo」の運動でもそうですが、発言したり意思を表示したりする人が叩かれる。これも沈黙に向かわせる憂慮すべき傾向ですね。

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