最新記事

アメリカ経済

パウエルFRB新議長、段階的な利上げ路線確認 初の議会証言で

2018年2月28日(水)09時20分

 2月27日、米FRBのパウエル議長は、下院の金融サービス委員会で初めての議会証言に臨む。写真はワシントンで5日撮影(2018年 ロイター/Aaron P. Bernstein)

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は27日に下院の金融サービス委員会で行った初めての議会証言で、経済の過熱リスクと、成長を軌道上に保つことのバランスをとることを確約し、減税や政府支出などによる追加的な刺激が存在しているものの、FRBは段階的な利上げを実施する方針を堅持すると表明した。

証言でパウエル議長は「連邦公開市場委員会(FOMC)は、経済の過熱の回避と、物価インフレを持続可能なベースで2%に達成させることを今後もうまく両立させる」と確約。このところの米国の財政政策の変更や世界的な景気回復などに言及し、「米経済が過去数年間直面していた向かい風の一部は、追い風となった」との認識を示した。

ただ「インフレはわれわれの長期目標である2%を下回り続けている」と指摘。FOMCの見解としては「フェデラルファンド(FF)金利誘導目標を引き続き段階的に引き上げていくことが、われわれが掲げる双方の目標の達成に最善となる」との見解を示した。

長期金利の上昇やこのところの市場のボラティリティーの高まりにより金融情勢はタイト化しつつある。ただパウエル議長は「こうした動きが経済活動、労働市場、およびインフレの見通しに重くのしかかっているとはみていない」との認識を表明。

むしろ「労働市場が堅調であることで家計収入と消費支出が支えられ、われわれの貿易相手国の経済成長が底堅いことで米国の輸出はさらに伸び、企業信頼感が好調で売上高が力強く伸びていることで企業投資が引き続き押し上げられる」との認識を示した。

このほか、インフレが根付く前に失業率はどこまで低下できるのか、FRBは現在「発見する過程」にあるとも述べた。米失業率は現在4.1%と、17年ぶりの低水準にある。

パウエル議長は、FRBは減税と力強い世界的な経済成長による「追い風」による恩恵を米経済が受けられるようにしながらも、過度なインフレからは守るとの姿勢を表明。初の議会証言の全般的なトーンは継続性であったと言える。

過去のFRB議長の議会証言では債券買い入れなどを巡り議員から厳しい質問が相次ぐ場面もあったが、パウエル新議長の初めての議会証言では質疑応答の大部分がFRBの金融規制に対する見解に関する質問に費やされるなど、火花が散る場面も、摩擦が表面化する場面もなかった。

パウエル議長は、FRBの現在の金融政策運営ツール、バランスシートの安定的な縮小、2%のインフレ目標はうまく機能していると表明。現在の枠組みは「機能している」とし、「市場はこのことを理解している」と述べた。

また、FRBは保有債券の売却ペースを速める必要があるのではないかとの質問に対しては、「現在の計画が好ましい」と回答。FRBが担う責務については、「最大雇用の実現とのわれわれの責務を真剣に受け止めている」と述べた。



[ワシントン 27日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中