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米国シェール革命が塗り替える「石油勢力図」 減産OPECの間隙つく

2018年2月19日(月)19時09分

中東地域を中心とするOPEC諸国やロシアなど、価格維持のため、2017年以来生産量を抑えてきた既存の石油輸出国の多くは、米国産石油の新たな参入によって、市場シェアを大きく失っている。

「OPECとロシアは、単に価格の現状維持を求めただけのために、米国が大産油国になることを許してしまった」とマーキュリアのデュナンド氏は語る。

2017年1月にOPEC主導の供給削減が開始されて以来、石油価格は20%上昇したものの、主として米国の生産量増大により、今月には再び下降圧力がかかっている。

膨大な米国産石油は、原油の価格設定手法まで変えてしまいかねない。

OPEC産油国の大半は、時には過去にさかのぼって月ごとの価格を設定する長期契約に基づいて原油を販売している。対照的に、米国生産者は、輸送費に加え、米国産原油と他国産原油の価格スプレッドに基づいて輸出している。

これは、ウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)の名で知られる米原油先物の取引量増大を招き、他のブレント先物やドバイ先物などの取引量に大差をつけてしまった。

「買い手側も、米国産石油の売り手と同様、WTIのヘッジを始めた」と語るのは、シンガポールのコンサルタント会社JTDエナジーサービシズのディレクター、ジョン・ドリスコル氏だ。

伝統的な石油秩序がこれほどの挑戦に直面しているにもかかわらず、既存の生産者は強気を装っている。

「米国の石油輸出増大に対しては、何の懸念も抱いていない。供給者としての信頼性において、われわれはどこにも負けないし、長期的な供給契約を結んでいる最高の顧客基盤がある」。サウジアラビアの国営巨大石油企業サウジアラムコのアミン・ナセル社長兼CEOはそう語った。

(翻訳:エァクレーレン)

Henning Gloystein

[シンガポール 9日 ロイター]


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