最新記事

エネルギー

米国シェール革命が塗り替える「石油勢力図」 減産OPECの間隙つく

2018年2月19日(月)19時09分

2月9日、シェール革命によって石油輸出を急拡大する米国は、世界の石油勢力図を根本的に塗り替えつつあるようだ。写真は米オクラホマで2016年、原油貯蔵タンクにつながるパイプライン(2018年 ロイター/Nick Oxford)

シェール革命によって石油輸出を急拡大する米国は、世界の石油勢力図を根本的に塗り替えつつあるようだ。

まず、米国の原油輸入が急減したことで、OPEC(石油輸出国機構)などの産油国が長年にわたって頼りにしてきた、この世界最大の市場が縮小してしまった。

そして今、ほんの2年前まで政府が禁止していた米国産石油輸出が膨らんでおり、OPECが優位性を持つ「最後の牙城」のアジアにおいても、米国産石油による挑戦に対峙しなければならなくなった。

米国産石油の中国向け輸出は増大しており、この世界の2大国のあいだに、2016年までは存在すらしていなかった、エネルギーという貿易分野が生まれつつある。対中貿易赤字の縮小に努める米国政府にとっては朗報だ。

こうした大きな変化は、最近発表されたデータにも反映されている。米国は今や、最大の石油輸出国サウジアラビアよりも多くの石油を生産しており、今年末までには生産量においても首位の座をロシアから奪う可能性が高い。

この成長には、米エネルギー情報局(EIA)も不意を突かれた格好だ。EIAは今月に入り、2018年原油生産量予測を1059万バレル/日に引上げた。わずか1週前に出した前回予測よりも30万バレル/日も多い数値だ。

2016年に米国が石油輸出を開始した当時は、最初の輸出先は自由貿易協定のパートナーである韓国と日本だった。中国が主要な買い手になると予想する者はほとんどいなかった。

トムソンロイターの金融端末アイコンによるデータでは、2016年以前はゼロだった米国産原油の中国向け輸出は、今年1月には過去最高の40万バレル/日、金額にして約10億ドルに達した。

これに加えて、1月には50万トン、約3億ドル相当の液化天然ガス(LNG)が米国から中国に向けて出荷されている。

縮小する対米貿易黒字

米国からの石油供給は、中国が抱える巨額の対米貿易黒字の削減に役立っており、中国の貿易は不公正だと主張するトランプ大統領に対する反論材料になるかもしれない。

「トランプ政権発足以来、中国の対米黒字に対するプレッシャーは相当に大きい。米国産石油の購入は、貿易不均衡の縮小という目標に向けた前進になる」と、コモディティ商社マーキュリアの共同創業者兼最高経営責任者(CEO)のマーコ・デュナンド氏は語る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中