最新記事

メディア

「逆にいやらしい」忖度しすぎなインドネシアの放送規制

2018年1月31日(水)18時50分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

リスのビキニ姿もNG

法に触れると言われたらそれまでだが、KPIの圧力によって放送事業者の検閲が行き過ぎた状態になっているのは事実だ。近年、子供が読む漫画などで、数々の「やりすぎ検閲」の事例が挙げられている。

インドネシアの西ジャカルタ市に拠点を置く民間局「Global TV」は2015年に、子供向け番組における暴力コンテンツの制限に違反したため、「ドランゴンボール」の戦闘シーンを複数カットした。さらにその数ヶ月後には、世界中で愛される人気アニメ「スポンジ・ボブ(SpongeBob SquarePants)」の主要キャラクターのリスのサンディがビキニ水着を着ていたという理由でモザイク処理された。「ドラえもん」のしずかちゃんも同様の対応がされている。

(モザイク処理されたリスのサンディ) (行き過ぎた報道規制を嘆くインドネシア人男性の投稿)


KPIは放送事業者に責任をなすりつけ

一方ですべての国民が「やりすぎ検閲」に甘んじているわけじゃない。SNSに目を向けた多くの視聴者は、KPIと御上に忖度する放送事業者に怒りをあらわにした。

KPIのユリアンドレ・ダルウィス議長はSCMPのインタビューに対し、検閲をしているのはあくまで放送事業者だと強調。KPIは単に放映された番組を監視するだけで、検閲自体の責任は放送事業者にあることを示唆した。

ダルウィスによると、法律に違反するのは、人の胸、腿または臀部の接写という。しかし、この規制がアニメキャラクターにも適用されるかどうかについては言及されていない。

ダルウィスは「放送事業者が法律を明確に理解する必要がある」と言うが、事業者はグレーゾーンに切り込むよりも保守的な検閲をしたほうが得策だと考えた結果が今の状況だろう。

そして規制はさらに加速しそうだ。インドネシアでは現在、放送規律機関の設置等の規定が盛り込まれた放送法の見直しが進められている。見直しでは、インターネットストリーミングサイトも監視の対象に含まれる。ダルウィスは、インターネットの規制がテレビ放送事業者と同等かどうかについて明言を控えており、雲行きの怪しさを感じずにはいられない。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国軍が東シナ海で実弾射撃訓練、空母も参加 台湾に

ビジネス

再送-EQT、日本の不動産部門責任者にKJRM幹部

ビジネス

独プラント・設備受注、2月は前年比+8% 予想外の

ビジネス

イオン、米国産と国産のブレンド米を販売へ 10日ご
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中