イラン制裁の皮肉な成果
米財務省は4日、弾道ミサイルの開発に関与したとしてイランの企業等に制裁を科した。ピークはBBCの取材に対し、将来はネット規制に関与したイラン政府当局者を制裁の対象にする可能性もあると語っている。
財務省の制裁担当者は長年、イランに情報通信技術を提供する方法の研究を続け、グーグルやアップルのような企業がイラン市場に参入できるようにする例外規定を検討してきた。だが、思うような成果は出ていない。
オバマ前米政権は13年と14年、通信情報技術のイラン輸出を促し、制裁がイラン当局の言論弾圧の助けになる事態を防ぐことを目的とした一般許可を出した。グーグルとアップルはすぐにイランのユーザーが自社のアプリストアを利用できるようにしたが、米企業は製品やサービスの提供に消極的だった。決済システムに懸念があったためだ。
米政府がイランの銀行に金融制約を科している現状では、米企業がイラン国内で無料サービス以上のものを提供するのは難しいと、財務省時代に一般許可の文書作成に関わった新米国安全保障センターのピーター・ハレル上級研究員は指摘する。「カネを稼ぐ方法を発見した会社はまだ1つもない」
さらに米企業は制裁違反を回避するため、イラン政府が自社の製品やサービスを使っていないことを確認しなければならない。一方、イラン政府はフェイスブックやツイッターなど、自国内で使われているサービスを自由に締め上げられる。イラン全土に抗議デモが拡大して以降は弾圧がさらに強化された。
ネット企業が過剰反応?
いまイラン政府の情報統制で最大の標的になっているのは、テレグラムだ。メッセージを暗号化してやりとりできるので、政府の検閲をかいくぐることができた。しかし、政府がこのアプリへのアクセスを遮断したことで、イランの人々は最も普及していた情報拡散ツールをほぼ利用できなくなった。
テレグラム以上にセキュリティーが強力な「シグナル」という暗号化メッセージアプリもあるが、イランではほぼ使えない。グーグルの取った行動が原因だ。
シグナルは国家による遮断を防ぐためにグーグルアップエンジンを利用している。専制国家がこのアプリを使えないようにするためには、グーグルのサービスを全て遮断する必要がある。そのような措置は専制国家でも二の足を踏む。