似た者同士のトランプと習近平が世界秩序を破壊する
まさに「中国の思う壺」
アメリカは、世界のリーダーとしての地位や自由主義市場(アメリカはこれらの最大の受益者でもある)に伴うリスクを軽減することに目を向けるべきだ。かつてのアメリカは自由主義の原則を守るためのコストやリスクを進んで背負ってきた。自ら進んで原則に縛られ、WTO(世界貿易機関)のような多国間の枠組みにおいて議論に負けるリスクも受け入れてきた。
だが、中国にはそのような意思はない。経済規模にものを言わせて、原則に縛られることを拒んでいる。
もしトランプや習のような経済観や交渉観が広がれば、自由主義の原則に基づく世界秩序の行方も危ういものになりかねない。イギリスのEU離脱やNAFTA(北米自由貿易協定)再交渉、南シナ海をめぐる領土問題といった例を見ても、ナショナリズムに基づく商取引的な2国間交渉が幅を利かせつつあることがうかがえる。
トランプ政権は孤立主義的ナショナリズムへと引きこもり、かつてアメリカが主導した自由開放路線から得られる利益がいかに大きいかを認めようとしない。これではまさに中国の思う壺だ。2国間交渉で中国に働き掛けても根本的な問題の解決にはつながらない。そればかりか、アメリカ自身がかつて築いた自由主義の秩序を守ることに無関心であると、あからさまに示すことにもなる。
※「ISSUES 2018」特集号はこちらからお買い求めいただけます。