ロシア軍「外交発言力」高まる プーチンが後押しする狙いは?
政策への介入
複数の米情報機関は、これ以外にもロシア軍が外交政策に介入している例として、昨年の米大統領選挙におけるロシア干渉疑惑への関与を挙げている。
米情報機関によれば、ロシア軍の対外諜報部門GRUは米民主党の職員や政治家のメールアカウントに対するハッキングを行い、トランプ氏の主要ライバルだったヒラリー・クリントン氏にとって世論が不利になるよう、メディアへのリークを画策したという。
ロシア政府はこうした容疑を否認している。
他にも、政治介入の例として、ロシア国防省は2015年12月、トルコのエルドアン大統領とその一族が、シリア及びイラク領内で過激派組織「イスラム国」の支配地域から石油を違法に密輸することで利益を得ている証拠をつかんでいる、と記者会見で発表した。
この告発は、トルコ空軍機がシリア・トルコ国境近くでロシア機を撃墜した1週間後の記者会見で行われており、エルドアン氏は誹謗中傷にすぎないと一蹴している。
この事件に対するロシア国防省の対応は、同国の外交官らに比べてはるかに厳しいものであり、米国務省や米国政府の外交政策に対する度重なる批判を含めた、幅広い広報政策の一環とみなされている。
その他に国防省が関心を示している地域としては、エジプト、スーダン、リビアがある。
ショイグ国防相は、先月モスクワで行われたプーチン大統領とスーダンのバシル大統領の会談にも参加している。またロシア国防省は1月、リビア東部の有力な軍指導者であるハリファ・ハフタル司令官を招き、ロシア唯一の航空母艦に乗艦させた。この訪問のあいだ、ハフタル司令官はショイグ氏と中東のテロ対策についてテレビ電話で協議した。
こうした出来事によって、ロシアが空軍基地と海軍施設を持つシリア以外に、イエメン、スーダン、アフガニスタンといった要衝にも拠点を広げることを計画しているのではないかという懸念が高まっている、と西側当局者はロイターに語った。
ロシア国内のアナリストや西側当局者は、ロシア国内の政策策定に関しても軍の影響力が拡大していると指摘する。デジタル経済から食料安全保障に至るまで、あらゆることについてプーチン大統領が軍の意見を求めているからだ。
理由の1つには、ウクライナからクリミア半島を奪取して以来、プーチン大統領が意志決定の方法を修正し、自ら議長を務める安全保障会議が扱う範囲を広げて、国内政策課題の多くについても討議するようになったことがある。
「ますます敵に囲まれるようになったとのロシア側の感情があるなかで、プーチン大統領は、あらゆる決定について、これまで以上に情報機関と軍に相談するようになっている。いつも彼らと会っている」。そう語るのは、シンクタンク「センター・フォー・ポリティカル・テクノロジーズ」の分析部門を率いるTatyana Stanovaya氏だ。
同氏は、軍が政策の原案を示すという意味ではないと述べた上で、プーチン大統領はこれまでに比べて軍の意見をはるかに重視するようになっており、国内政策分野でも軍が重要な発言権を持つようになっている、と語った。
(翻訳:エァクレーレン)
[モスクワ 13日 ロイター]
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