ロシア軍「外交発言力」高まる プーチンが後押しする狙いは?
シリアでの役割
ロシア、そしてその前身であるソビエト連邦での軍の影響力には、浮き沈みが見られる。
大きな影響力を持っていたのは第2次世界大戦終戦時、そして1950年代に旧ソ連の指導者スターリンが死亡した後である。このときはナチスドイツの打倒に重要な役割を果たしたと評価されるゲオルギー・ジューコフ元帥が国防相の座にあった。
だが、1989年に完了したアフガニスタンからの不名誉な撤退、ソ連崩壊後の2度にわたるチェチェン紛争、2000年に乗員118人全員が死亡した原子力潜水艦クルスクの沈没事故によって、軍の名声は地に墜ちた。
旧ソ連の国家保安委員会(KGB)諜報員だったプーチン氏が、軍の最高指揮官でもある大統領に就任すると、軍の株は上昇した。国防費は増大し、軍はジョージア、ウクライナ、シリアに派遣され、その活動は愛国心高揚のために利用された。
政治・外交政策における軍の影響力増大が最も顕著に現れているのが、シリアだ。
ジョイグ国防相は今年すでに2度ダマスカスを訪れてアサド大統領と会談しており、今月再び、同大統領と会談したプーチン氏に随行した。一方、ラブロフ外相は今年に入り一度もシリアを訪れていない。
国防相としては異例のことだが、ショイグ氏はシリア和平のための外交努力にかかわっている。この役割のなかで、ショイグ氏はシリアにとっての新憲法制定の重要性を語り、シリア問題に関する国連特使と会談し、イスラエルのネタニヤフ首相、カタールのタミム首長と協議している。
ロシア外務省や国防省と直接の接触がある西側当局者によれば、ロシアの軍は政府に対して、外務省とは質の異なる現実的な影響力を持っているという。
この当局者によれば、ロシア軍とシリア政府上層部のあいだには「強い相互信頼関係」が築かれている。理由は「ロシア軍がシリア政府上層部の安全を守り、彼らがそれを重く見ているから」だという。
ロシア外務省も依然、有能な中東専門家を抱え、引き続きシリアで重要な役割を演じており、カザフスタンでの和平協議を支えている。
だが、シリアにおける米ロ両国の協力合意を取りつけようとするラブロフ外相自身の努力は、時に外務省と国防省の考えが大きく異なる場合があることを如実に示している。
ラブロフ外相は依然として、プーチン大統領の信頼と敬意を受ける優れた外交官だと見られている。だが西側の当局者らによれば、同外相は必ずしも重要な会議すべてに呼ばれるわけではなく、シリアでの主要な軍事作戦についても知らされていないという。