最新記事

銀行

人気の英国ネット銀行、顧客データへの企業の接続手数料で収益追求

2017年12月26日(火)14時01分

ネット銀行のアプリには提携先企業のサービスが結び付き、融資や投資から保険やエネルギーに至るサービスの「市場」が形成され、顧客が提示されたサービスに署名した時点で銀行に手数料が支払われる。

ネット銀行は程度の差こそあれ、こうした収入源に依存している。

この手数料収入について、ボーデン氏はスターリング・バンクの収入全体の約3割強を占めると説明。モンゾのブロムフィールド氏は、長期的には主要な収入源になると予想している。同氏は「そうした仕組みを実際に働かせるには、非常に大きな規模とデータへのアクセスが必要になることが、難題として挙げられる」と話した。

調査会社グッドボディで英銀調査部門を率いるジョン・クローニン氏は、他行も同様の戦略を追求する中で、その取り組みを成し遂げるのが難しいと語った。

ヴァージン・マネーもこうした市場の構築を計画しており、HSBCは資金運用のアプリの試験的導入を進めている。顧客データの共有を義務付ける新たな規制に対応して、他の大手行も追随する見通しだ。

成長に伴う苦痛

ネット銀行は支店を持たず、デジタルのみでサービスを提供するため、コストを格段に低く抑えることができる。

それでもネット金融サービスを手掛けるリボルートは、市場の手数料から得られる資金だけでは、目標とする規模を達成できないと考えている。同社は120万人の顧客を抱え、企業価値は3億ポンドと評価されている。

リボルートはプレミアム顧客とビジネス顧客の契約により2016年に売上高が236万ポンドとなり、オーバードラフトや融資も提供する計画だ。2018年末までに収支は損益分岐点を突破できると予想している。

スターリング・バンクも1年遅れで同様の目標を達成する計画を打ち立てている。ボーデンCEOによると、オーバードラフトの金利が収入の3割強を占めている。

モンゾも現在、オーバードラフトを本格導入しており、融資商品の導入も検討している。

KBWのマネジングディレクター、エドワード・ファース氏は、大手銀行がリテール業務から稼ぎ出す利益は、ネット銀行によって半分に引き下げられ、それでもネット銀行には十分な利益になると指摘。こうした収入が市場を補足するビジネスモデルに自信を強めているが、「まだ検証されていない」と話した。

モンゾは既に顧客1人当たりのコストを半減させているが、海外での現金引き出しなどに関するサービスを縮小している。

同社は現在、収入が増え始めている。ブロムフィールド氏は、市場の役割が一段と重要になるとみているが、「本格展開できるまでは確実に把握するのは難しい」と語った。

(Emma Rumney記者)

[ロンドン 21日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


ニューズウィーク日本版のおすすめ記事をLINEでチェック!

linecampaign.png

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中