最新記事

アメリカ政治

バノン氏との出会い――中国民主化運動の流れで

2017年12月21日(木)16時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

2017年11月15日、シンポジウム会場におけるバノンと筆者  写真は筆者提供

11月15日、バノン氏と会った。ワシントンにいる中国民主活動家主催のシンポジウムで座長を頼まれ、そこでバノン氏が講演したからだ。運命的な出会いにより、バノン氏は再来日に当たり筆者を単独取材した。

奇跡的なタイミング

11月15日、筆者は代々木にあるオリンピック青少年センターで開催された「人権、民主と和平を推進する」というシンポジウムで座長を務めるように頼まれていた。頼んできたのはワシントンで中国の民主化のために闘っている「公民力量」の韓連潮博士だ。中国の人権派弁護士として劉暁波にノーベル平和賞を受賞させるためにキャンペーンを張り、成功まで導いていった人物である。

14日の夜から始まった開幕式にも参加するため、筆者は前日の夜はオリンピックセンターの近くのホテルに一泊していた。バノン氏の講演の受け付けは朝9時から始まるが、セキュリティ・チェックは前夜済ませてあるので、講演が始まる9時半ギリギリの時間帯にタクシーで会場の駐車場に乗りつけた。

タクシーから降りると同時に、後ろから大きな車が滑り込んできて、数名の背の高い頑丈そうな男性がその車を囲んだ。

まさか――、と思ったが、予感は的中した。

大きな車から降りてきたのは、まさにスティーブン・バノンその人だったのである。

筆者はバノン氏の講演直後の同じ会場で10時半から始まるシンポジウムの座長を頼まれている。講演が終わったら、バノン氏はきっと大勢の記者に取り囲まれるだろうけど、その合間に何とか名刺交換だけでもできれば嬉しいと思っていたものだから、この瞬間、多くの思いがよぎった。

そうだ、ここで挨拶してしまおう――。

そう思って、ともかく名前を名乗り、名刺を渡して挨拶をしたところ、ボディガードに取り囲まれた。そしてそのままエレベーターの前に。

エレベーターの待ち時間は、ほんの10秒ほどであったかもしれない。ここで勇気を出して持参してきた『毛沢東 日本軍と共謀した男』の英文ダイジェスト版"Mao Zedong, Founding Father of the People's Republic of China, Conspired with the Japanese Army"を渡すべきか否か迷った。しかし彼を囲むボディ・ガードの目つきが鋭く、彼に接近できないように体でガードを固めている。これを突破する勇気はさすがにない。

ところがバノン氏が秘書らしいボディガードに指示を出したではないか――。

「おい、君、君も彼女から名刺をもう一枚もらっておいてくれ。記録しておきたまえ」

それは奇跡的な一瞬だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ソフトバンクG、オープンAIに追加出資 最大5.9

ビジネス

大企業・製造業DIは4期ぶり悪化、非製造業は91年

ワールド

ブラジル前大統領、ルペン氏公職追放を「左派的司法活

ワールド

中国軍、台湾周辺で陸海軍・ロケット部隊の合同演習
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中