「赤ちゃんポスト」で遺体発見のドイツ、注目の「内密出産」とは?
「赤ちゃんポスト」や「匿名出産」が批判される理由の1つに「子供の『親を知る権利』を侵害している」というものがあるが、この点、母親の情報が保管される「内密出産」では、子供が16歳になり、生みの親を知る権利を得たときに、情報を開示することによりその権利を保障できる。「匿名」より「内密」が奨励される理由だ。
希望すれば誰もが「内密出産」を選択できるわけではない。あくまでも子供と生活する道を選ぶことを政府が奨励できるように、女性は出産前に「包括的で、敷居の低く、オープンで偏見のない」カウンセリングを受けねばならない。また、法令では「人生、健康、個人的自由、そして同様の正当な懸念にリスクをもたらす可能性がある」ことも証明しなければならない。
政府の発表によると、2014年から今年夏の時点で355人の女性が「内密出産」を選択したという。ひどい個人的苦痛や暴力を経験してきた女性たちだった。昨年9月までにカウンセリングを受けた1277人の女性のうち、26%が結果的に通常の出産をし、子供と一緒に暮らしていくことを決断、15%が養子縁組、19%が内密出産、そして40%が中絶など他の選択肢を選んだという(ツァイト)。
前出のアポルダ病院でも、2014年の全国での法施行以来、「内密出産」および「匿名出産」に対応できるよう、専門のスタッフを雇用、訓練し、内部での情報交換、またカウンセリング当局との連携をはかって体制を整えている。まずは「内密出産」を選ぶよう説得し、母親が拒否すれば「匿名出産」にも対応するが、実際にこれらを選択した女性はこれまでにないという。
いずれにしても、たった一人で嬰児を産み落としポストに預ける女性たちとは異なり、病院での出産なら母子ともに必要な医療ケアやアドバイスが受けられる。何のサポートもなく一人悩む女性たちにとって、偏見なく対応してくれる専門家の存在は精神的・肉体的に大きな助けとなるのではないか。