ジンバブエ政変の裏に中国ダイヤ利権
隣国モザンビークでダイヤを違法に取引するジンバブエ人 Goran Tomasevic-REUTERS
<国軍と密接なパイプを保ちダイヤ採掘に利権を持つ中国は、ムガベ退陣を暗黙のうちに支持して政治・経済を掌握した>
ついに幕が下ろされた。ジンバブエの政変は11月21日、ロバート・ムガベ大統領が辞任。37年に及ぶ長期支配に終わりを告げた。だがムガベ政権の弱体化は、数年前から明らかだった。
与党のジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線(ZANU-PF)は2つの派閥に分裂し、いずれも93歳になるムガベの後釜を狙っていた。一方は大統領の妻グレースが率いる「ジェネレーション40(G40)」で、政界の若手指導者が支持していた。
対する「ラコステ・グループ」は、独立闘争時代からの古参指導者が中心の勢力だ。ラコステの名は、前副大統領で新大統領となったエマーソン・ムナンガグワにちなむ。南ローデシアと呼ばれた英植民地時代に黒人が少数派白人支配と闘った頃、ムナンガグワは政治的な抜け目なさから「クロコダイル」の異名を取った。ラコステ派は歴史的に、コンスタンティノ・チウェンガ司令官の率いる国軍と密接な関係にある。
グレースは贅沢好きで、夫の後継者になりたがっていることでも知られていた。一方のムナンガグワはムガベの腹心であり、80年代の大量虐殺で少数民族ンデベレ人を弾圧した残忍さで悪名高い人物だ。
今回の政変が始まったのは11月14日。軍が大統領を自宅軟禁下に置いてG40関係者の身柄を拘束し、6日に副大統領を解任されていたムナンガグワの大統領就任を実現させた。
この一連の流れについては詳細に報道されているが、政変の持つ国際的な意味はほとんど知られていない。
とりわけ報じられていないのが、政変に絡む中国の役割だ。中国は公式に否定しているが、たとえ暗黙の了解にしても、軍の動きを支持したようだ。当初はG40に近かった中国だったが、ジンバブエ軍とムナンガグワと通じたためにラコステ派支持に転じたとみられる。
銃から戦闘機まで売却
今回の政変への関与は否定しても、中国はジンバブエの独立闘争時代からその政界と太いパイプを築いてきた。ムガベの率いる(当時)は、主に多数派民族のショナ人が指導層を形成し、国軍兵もショナ人が中心。そして、中国から武器と資金の供与を受けてきた。
90年代以降、中国はジンバブエとの経済関係を強化し続け、鉱業や農業、エネルギー産業、建設業に積極的に投資した。
15年、ジンバブエにとって中国は最大の輸出相手国となり、外国からの直接投資の74%を占めるようにもなった。同じ年、中国は40億ドルの援助・投資計画を約束。新しい国会議事堂の建設費用として4600万ドルを供与することにも同意した。