最新記事

アフリカ

ジンバブエ政変の裏に中国ダイヤ利権

2017年12月5日(火)15時30分
バサブジット・バナジー、ティモシー・リッチ

隣国モザンビークでダイヤを違法に取引するジンバブエ人 Goran Tomasevic-REUTERS

<国軍と密接なパイプを保ちダイヤ採掘に利権を持つ中国は、ムガベ退陣を暗黙のうちに支持して政治・経済を掌握した>

ついに幕が下ろされた。ジンバブエの政変は11月21日、ロバート・ムガベ大統領が辞任。37年に及ぶ長期支配に終わりを告げた。だがムガベ政権の弱体化は、数年前から明らかだった。

与党のジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線(ZANU-PF)は2つの派閥に分裂し、いずれも93歳になるムガベの後釜を狙っていた。一方は大統領の妻グレースが率いる「ジェネレーション40(G40)」で、政界の若手指導者が支持していた。

対する「ラコステ・グループ」は、独立闘争時代からの古参指導者が中心の勢力だ。ラコステの名は、前副大統領で新大統領となったエマーソン・ムナンガグワにちなむ。南ローデシアと呼ばれた英植民地時代に黒人が少数派白人支配と闘った頃、ムナンガグワは政治的な抜け目なさから「クロコダイル」の異名を取った。ラコステ派は歴史的に、コンスタンティノ・チウェンガ司令官の率いる国軍と密接な関係にある。

グレースは贅沢好きで、夫の後継者になりたがっていることでも知られていた。一方のムナンガグワはムガベの腹心であり、80年代の大量虐殺で少数民族ンデベレ人を弾圧した残忍さで悪名高い人物だ。

今回の政変が始まったのは11月14日。軍が大統領を自宅軟禁下に置いてG40関係者の身柄を拘束し、6日に副大統領を解任されていたムナンガグワの大統領就任を実現させた。

この一連の流れについては詳細に報道されているが、政変の持つ国際的な意味はほとんど知られていない。

とりわけ報じられていないのが、政変に絡む中国の役割だ。中国は公式に否定しているが、たとえ暗黙の了解にしても、軍の動きを支持したようだ。当初はG40に近かった中国だったが、ジンバブエ軍とムナンガグワと通じたためにラコステ派支持に転じたとみられる。

銃から戦闘機まで売却

今回の政変への関与は否定しても、中国はジンバブエの独立闘争時代からその政界と太いパイプを築いてきた。ムガベの率いる(当時)は、主に多数派民族のショナ人が指導層を形成し、国軍兵もショナ人が中心。そして、中国から武器と資金の供与を受けてきた。

90年代以降、中国はジンバブエとの経済関係を強化し続け、鉱業や農業、エネルギー産業、建設業に積極的に投資した。

15年、ジンバブエにとって中国は最大の輸出相手国となり、外国からの直接投資の74%を占めるようにもなった。同じ年、中国は40億ドルの援助・投資計画を約束。新しい国会議事堂の建設費用として4600万ドルを供与することにも同意した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアとの戦争、2カ月以内に重大局面 ウクライナ司

ビジネス

中国CPI、3月は0.3%上昇 3カ月連続プラスで

ワールド

イスラエル、米兵器使用で国際法違反の疑い 米政権が

ワールド

北朝鮮の金総書記、ロケット砲試射視察 今年から配備
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア軍の上陸艇を撃破...夜間攻撃の一部始終

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 6

    「未来の女王」ベルギー・エリザベート王女がハーバー…

  • 7

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 8

    「私は妊娠した」ヤリたいだけの男もたくさんいる「…

  • 9

    礼拝中の牧師を真正面から「銃撃」した男を逮捕...そ…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 8

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 9

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中