最新記事

北朝鮮情勢

米朝戦争になったら勝つのはどっち?

2017年12月1日(金)19時47分
ジョン・ホルティワンガー

北朝鮮は生物兵器や化学兵器を大量に保有すると見られており、戦争になればそれらを使用する可能性が高い。

北朝鮮軍は様々な面で規模こそ大きいが、使用する兵器が古いうえ、北朝鮮兵士は極度の栄養失調に陥っている。南北軍事境界線を越えて11月13日に韓国に亡命した北朝鮮兵士の小腸からは、最大で26センチになる寄生虫が見つかり、胃には未消化のトウモロコシが残っていた。これほど劣悪な栄養状態にある北朝鮮兵士が、戦争中に長い間持ち堪えられるとは思えない。兵器だけでなく兵士についても、数より質の方がよほど重要だ。

■核兵器の保有数が多いのは?

アメリカは約6800発の核弾頭を保有し、ロシアに次いで世界第2。位だ。うち1800発は実戦用に配備、4000発は備蓄用、2800発は廃棄予定だ。一方、北朝鮮が保有する核弾頭数は25~60発の間だと、米情報機関や専門家は分析している。

今差し迫った問題は、米本土に到達可能な核弾頭を搭載したICBMを発射して標的に撃ち込む技術を北朝鮮が確保したかどうかだ。まだだとしても時間の問題で、早ければ2018年中に完成させる可能性があると専門家は見ている。

米軍は、射程が1万キロ以上で数分以内に発射できる命中精度の高い長距離ミサイルをすでに保有している。アメリカの核兵器は北朝鮮をはるかに上回る規模で、核・ミサイル技術も格段に進んでいる。

米軍勝利は疑わないものの

■米朝戦争が起きれば流血の大惨事になる

軍事専門家のほとんどは、米朝戦争になれば必ずアメリカが勝利するに決まっていると言う。だが同時に多くの専門家は、米軍や韓国、日本、米領グアムの数百万人が犠牲になる可能性もあるとみる。

米議会調査局が10月に発表した報告書は、米朝戦争が起きた場合、通常兵器しか使用しない場合でも、最初の数日で最大30万人が死亡すると推計した。米ジョンズ・ホプキンズ大の北朝鮮分析サイト「38ノース」が10月に発表した別の報告書は、もし北朝鮮が韓国の首都ソウルと東京を核攻撃した場合、両都市で死者が最大210万人に上ると推計した。

米軍の最高機関である米統合参謀本部は10月下旬、北朝鮮が開発する核兵器や関連施設を破壊するには、地上侵攻しかないとする見解を示した。北朝鮮の核兵器や通常兵器の保管場所に関する情報がほとんどなく、空爆で完全に破壊することができないからだ。米軍が地上侵攻に踏み切れば、北朝鮮と国境を接するロシアと中国の利害が絡み、事態が極めて複雑になる。中ロ両国には、親米政権による朝鮮半島の統一を避けたい思惑があるからだ。

【参考記事】北の核武装解除には米軍の地上侵攻必要 爆撃で済ませるための情報なく

(翻訳:河原里香)

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!

気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを

ウイークデーの朝にお届けします。

ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 9
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中