EVとAIで人気のテスラ ささやかれる「自動車製造を甘く見た」ツケ
拙速な開発
テスラは、同社が欠陥のない自動車生産に苦労しているという現旧従業員の指摘に異議を唱えている。同社広報担当者は、全車両が500以上の検査や試験をパスしなければならない同社の厳格なプロセスを説明した上で、組立後に製品の手直しをすることがあるとしても、それは品質重視の姿勢を反映したものだ、と語る。
「私たちの目標は、顧客1人ひとりに完璧な車を製造することだ」とテスラは声明で主張する。「したがって、ほんのわずかでも改善の余地がないか、すべての車両をチェックしている。大半の顧客は、製造後に行われた作業に気付くことすらないだろうが、私たちは、車体に数分の1ミリのズレや、塗装のわずかなムラであっても気にかけている。完璧を期すため、こうした改善点を製造現場にフィードバックしている」
「モデルS」や「モデルX」に関わっていた従業員によれば、たとえ問題が生じた場合も、組立ラインを止めるなどの圧力が存在したという。あるときはフロントガラス、あるときはバンパーといった具合に、在庫がないという理由で、部品が欠けたままの車が一斉に流れてくることもあった、と彼らの一部は語る。そのような欠陥は後で修正されるという理解だったという。
車が組立ラインを離れた時点で、内部追跡システムで報告された以上の欠陥を、品質検査員が発見することもあった。「問題を2つ見つけたなら、これはかなり良い方だ。しかしもっと突っ込んで調べると、15も20も見つかることがあった」と彼らの1人は語った。
たえず面倒を引き起こしていたのが「アライメント」の部分だという。シニアマネジャーの言葉を借りれば、車体部品をかなりの勢いで「むりやり押し込まなければ」ならなかった。従業員らによれば、すべてのチームが同じ手順書に従っているわけではなかったため、サイズの違いが生じていたのである。
テスラは、同社の品質管理に一貫性が欠けていることを否定する。エラーを発見・修正する「徹底的な」プロセスが「大きな成功」を収めていると述べている。
こうした問題の一端は、同社のマスクCEOが、設計プロセスの短縮や一部の製造前試験の省略、現場レベルでの改善といった手法によって、業界標準よりも迅速に新車種を発売する方針を決定したことにある、と一部の従業員は考えている。こうした場当たり的なやり方が、修正発生率の高さにつながっている、と言うのだ。
JDパワーは「熱狂の裏側」と題する3月のレポートで、新型の「モデルS」と「モデルX」について、異音や擦り傷、ドアのアライメント不整といった問題を取り上げ、テスラの製造経験の浅さが原因であると指摘した。このレポートの結論として、テスラ車の全般的な品質は高級車セグメントにおいて「競争力に欠け」、「精度と細部に対する注意」が不足していると述べている。
JDパワーでグローバル自動車コンサルタント部門のディレクターを務めるキャスリーン・リツク氏は、こうしたお粗末さは、メルセデスベンツやBMWといった高級車ブランドではめったに見られないものだ、と語る。
「こうした企業は、はるか以前から製造業に携わっている」と彼女は言う。「彼らは即座に対処する術を心得ている」
テスラは顧客満足度の高さが、「今日入手可能な、最も安全で性能の優れた車」を作っていることを証明していると述べている。
(翻訳:エァクレーレン)
[サンフランシスコ 29日 ロイター]
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