EVとAIで人気のテスラ ささやかれる「自動車製造を甘く見た」ツケ
最低3万5000ドル(約395万円)からの価格帯にある同社初の大衆車「モデル3」製造にあたり、高品質な車を大量生産する能力を有するかどうかが、テスラの今後を左右すると専門家は指摘する。
テスラはこれまで通年で黒字化したことがなく、四半期で10億ドルの損失を計上している。新たな投資を獲得するか、欠陥に対して厳しい反応が予想される主力市場において販売台数を大幅に拡大しない限り、存続が難しい状況だ。
「最上級の仕様を備えた、胸躍る製品を生み出すという点で、テスラの能力を疑ったことはない。しかし、新しい何かを生み出すことと、それを実際に完璧に大量製造することは別問題だ。後者について、テスラは、まだその実現に至っていない」モーニングスターのアナリスト、デビッド・ウィストン氏はそう記している。
テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、高度に自動化された新組立ラインを導入し、「モデル3」においてよりシンプルな設計を採用することで、同社が「地上で最も優れた製造企業」になると胸を張る。だが、製造上の問題により、大きな期待を集めている新型セダンの提供は予定よりも遅れている。
新車発売に予想外のトラブルはつきものだ。とはいえ、既存車種の「モデルS」や「モデルX」につきまとう欠陥は、テスラがいまだ基本的な製造技術の獲得に苦労していることを示している、と現旧従業員は話す。
同社内では「キックバック」と呼ばれているが、こうした欠陥車両は、へこみや傷といった些細な不具合や、シートの機能不全などの複雑なトラブルを抱えていたりする場合がある。簡単なものであれば工場内ですぐに解決してしまうという。
面倒なトラブルの場合、テスラの屋外駐車場に運ばれ、修理を待つことになる。こうした「中庭」と呼ばれる駐車場の1つでは、修理待ち車両が2000台を超えることもあるという。テスラはロイターに対し、こうした「修理待ちスペース」の存在を否定している。
ロイターが取材した現旧従業員9人には「モデルS」「モデルX」の組立てや品質管理、修理の経験を持つ元シニアマネジャーも含まれる。会社側から秘密保持契約書への署名を求められているため、全員が匿名で語った。
このうち4人は解雇されており、そのうち2人は、先月テスラが「勤務成績の不振」を理由に解雇した数百人に含まれる。ロイターの取材に応じた解雇従業員は、自らの業績が劣っていたことを否定する。
明かされたテスラ社内の品質データについて、ロイターは独自の裏付けを得ていない。
欠陥の内容について、「ドアの閉まりの悪さ、バリ残り、部品欠落など、何でもありだ。ぐらついていたり、水漏れしたり、何もかもだ」と語るのは、また別の元スーパーバイザーだ。「『モデルS』は2012年から作っている。それなのに、なぜまだ水漏れが起きるのか」