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ゲノム編集で植物をスパイに!?米軍が新たな研究開発に着手

2017年11月29日(水)20時00分
松岡由希子

ゲノム編集で植物をスパイに!?米軍が新たな研究開発に着手 paylessimages-iStock

<DARPA(国防高等研究計画局)は、植物をゲノム編集して、特定の化学薬品や病原体、放射線を感知し、外界からの刺激を伝達できるような能力を付加した"植物センサー"をつくりだすことを計画している>

DARPA(国防高等研究計画局)は、軍事技術の研究開発を管轄するアメリカ国防総省(DoD)の機関であり、1950年代後半から60年代にかけてインターネットの原型となるARPANETGPS(全地球測位システム)を開発したことでも知られている。

現在、ドローン(無人航空機・UAV)ロボット技術などの研究開発に取り組む一方で、2017年11月17日には、合成生物学を中心とする「APT(先端植物技術)プログラム」を新たに創設し、植物に特定の環境を感知させる"植物センサー"の研究開発に着手した。

ゲノム編集して"植物センサー"をつくりだす

植物には、光や温度をはじめとする様々な環境刺激を感知し、生理機能や形態を柔軟に変化させることで環境との調和をはかる"環境感覚"が備わっている。また、自立的に生息する能力を持ち、比較的容易に配置しやすく、環境のあちこちに偏在しているのも"スパイ"として活用する上では利点だ。

そこで、「APTプログラム」では、植物が有する生来のメカニズムを生かしながら、植物の生存力や生態系、自然環境などに影響をもたらさない範囲でゲノム編集して、特定の化学薬品や病原体、放射線、電磁信号を感知し、外界からの刺激を伝達できるような能力を人工的に付加した"植物センサー"をつくりだすことを計画。これによって、丈夫で目立ちにくく、容易に展開可能な、エネルギー自立型のセンシングプラットフォームを構築しようと考えている。

「APTプログラム」では、現在、合成生物学や生体工学、生化学、植物生態学、リモートセンシングなど、様々な領域にわたって研究者や専門家からの提案を募集。あらゆる連邦規則を遵守しながら、まずは、実験室や温室設備で限定的に研究開発活動を行い、フィールド試験へとすすむ流れを想定している。

APT_Graphic.jpg

(C)DARPA

このような"植物センサー"は、諜報や偵察といった軍事利用だけでなく、様々な分野での応用が期待されている。たとえば、過去の戦争や紛争で残されたままの地雷や不発弾を感知することで、地域の安全を担保したり、空気中に流出した有害な薬品などを素早く感知することで、犯罪やテロの防止につなげることができるだろう。

"植物センサー"が"スパイ"として活躍するまでにはまだ時間がかかりそうだが、近所の公園でさりげなく風に揺れている草花が、実は"スパイ"だった、ということも、近い将来、現実となるかもしれない。

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