最新記事

米外交

トランプの無策が中国の追い風に

2017年11月27日(月)10時55分
ダン・デ・ルース

オバマ前政権とは正反対

トランプ政権発足から10カ月余り。南シナ海問題をめぐるオバマ前政権との政策の違いは鮮明だ。前政権は外交重視で、一貫してこの海域での国際法遵守を重視した。一方、中国を牽制するための「航行の自由」作戦は避けがちだった。

逆にトランプ政権では「航行の自由」作戦が恒常化。その半面、中国の侵略に対抗する外交政策を指揮したり、中国の進出に脅かされているアメリカの同盟国を励ましたりする気配はほとんどないと、元政府関係者や専門家は指摘する。

「南シナ海問題ではトランプは無策で、中国に主導権を握られている」と、米中関係とアジアの安全保障問題に詳しいエール大学法学大学院のミラ・ラップフーパー上級研究員は言う。

アジア歴訪終盤、トランプはベトナムと中国との「仲介役」をすると申し出た。だがベトナム側は、北朝鮮をめぐる米中のゲームの駒にされるのではないかと恐れている。

それでもオバマ前政権関係者の一部には楽観論もある。トランプ政権はようやく南シナ海での中国の活動に対する監視強化など、一貫した政策策定に乗り出している。今回の歴訪中、日本とベトナムで今後も南シナ海の領有権争いを軍事力ではなく国際法に基づいて解決することを支持すると表明した。

「トランプはようやく政策策定に慣れて、今後は南シナ海問題にも力を入れるのではないか」と、前政権で副大統領顧問を務めたラトナーも期待を示す。「諦めるのはまだ早い」

From Foreign Policy Magazine

<本誌2017年11月28日号掲載>

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ米政権、ハーバード大への助成・契約90億ド

ワールド

アルゼンチン貧困率、24年下半期は38.1%に急低

ワールド

豪中銀、政策金利据え置き 米関税の影響懸念

ワールド

イスラエル首相、「カタールゲート」巡る側近の汚職疑
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中