最新記事

教育

飛び級を許さない日本の悪しき年齢主義

2017年11月16日(木)15時15分
舞田敏彦(教育社会学者)

飛び級も落第も日本の義務教育ではほとんど皆無 RichVintage-iStock.

<日本の教育制度では飛び級や落第は極めて例外的な措置でしかないが、他の先進国を見ると、年齢に関係なく高等教育を受ける飛び級は一般的に導入されている>

年齢がわかれば、その人がどのライフステージ(教育期、仕事期、引退期......)にいるか見当が付いてしまう――日本は「エイジ」と「ステージ」が硬直的に結びついた社会だ。

変動が速く、かつ人生100年の時代では、こういう社会の仕組みは変えないといけない。リンダ・グラットン教授の名著『ライフ・シフト-100年時代の人生戦略-』(東洋経済新報社刊)で指摘されていることだが、その典型的なケースが日本だろう。

学校に通っている子どもや若者ならば、年齢から当人の在籍学校を容易に言い当てることができる。7歳は小学校、14歳は中学校、17歳は高校、21歳は大学というように。統計を見ても、7~14歳の子どものほぼ全員が小・中学生だ(総務省『国勢調査』2010年)。

しかし諸外国ではそうではない。内閣府の『我が国と諸外国の若者の意識に関する調査』(2013年)では、13~29歳の生徒・学生の在籍学校を調べている。13~15歳の生徒を対象に、在籍学校の内訳を国別に比較すると<図1>のようになる。

maita171116-chart01.jpg

日本ではほぼ100%が中学か高校だが、韓国では7.8%(13人に1人)、アメリカでは4.1%(24人に1人)が大学か大学院に籍を置いている。優れた才能を持つ者は、年齢に関係なく大学に入れる「飛び級」の制度が普及している。

日本でも飛び級制度はあるが、「高校に一定年数在籍したこと」(学校教育法第90条)が前提になるため、10代前半の青少年が大学に入学することはできない。義務教育段階では、飛び級もなければ落第もない、完全な「年齢主義」になっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不

ワールド

アングル:またトランプ氏を過小評価、米世論調査の解

ワールド

アングル:南米の環境保護、アマゾンに集中 砂漠や草

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中