北朝鮮の飢きんが生んだ「人造肉」 闇市と人民の工夫がつなぐ命
平壌でピザ
他の国々のように、北朝鮮の富裕層には選ぶ自由がある。首都平壌の住民は、市内に数百件あるレストランからピザを注文することができると、定期的に同国を訪れる外国人たちは言う。
飲食店の多くは国有企業によって経営されている。一部の店は、かつては観光客向けだったが、今では北朝鮮人にも開放し、ドルやユーロといった外貨を稼ぐ店が増えているという。
例えば、「光復通りのイタリアン」として有名なレストランでは、住民も西側の観光客も料理の価格は同じで、ボンゴレパスタは3.5ドル(約400円)、ペパロニピザは10ドルとメニューにある。一方、市場では、トウモロコシは1キロ当たり30セント、インジョコギ1人前は50セントで売られている。
北朝鮮経済が変わるにつれ、カネのある中間層の嗜好も変化し、新しい食べ物への欲求が高まっている。国営メディアによれば、金正恩・朝鮮労働党委員長は国産品をもっと増やすよう求めている。
北朝鮮では、菓子やスナック、キャンディーの国内生産が増えている。同国は詳しい輸入データを公表していないが、中国のデータによれば、今年1─9月に北朝鮮向けの砂糖輸出は4万4725トンに急増した。2016年は1236トン、2015年は2843トンだった。これは、中国の砂糖輸出の約半分に相当する。
北朝鮮は砂糖を生産していない。
その一方で、今年1─9月の北朝鮮向けトウモロコシ輸出も5万トン近くに急増したと中国のデータは示している。2016年は通年でわずか3000トン余りだった。
デイリーNKの記者たちは週に数回、北朝鮮の情報筋に電話し、コメやトウモロコシ、豚肉や燃料の市場価格、そして北朝鮮通貨ウォンの市場相場を確認している。公式レートは1ドル100ウォン程度であるのに比べ、市場では1ドル約8100ウォンで取引されている。
同メディアの報道によると、これまでのところ、ガソリンやディーゼルの市場価格は、国連が追加制裁決議を採択して以来、2倍に跳ね上がっている。それに比べると、コメとトウモロコシの価格はそこまで激しく値上がりしていないという。ロイターはこれら報道を独自に確認できなかった。
北朝鮮の国民が食糧を補う方法は他にもある。
「私の父はよく賄賂を受け取っていた」と、Kangという名字だけ明かした28歳の脱北者の女性は言う。この女性は北朝鮮に父親を残して2010年後半に脱北した。
父親は地位の高い官僚で、ヤギや犬やシカの肉などの賄賂を受け取っていたと女性は語った。
(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)
[ソウル 3日 ロイター]
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