最新記事

中国共産党

中国新「中央宣講団」結成――中国に進出する日本企業にも影響か

2017年11月6日(月)15時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

習近平は一層、王滬寧に頼って「初心、忘るべからず」を唱え続け、建党から直接「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」へと直結させようとしているのが見えてくる。

日本企業にも影響する王滬寧の意思表明

今も習近平のブレインである王滬寧は、同会議で、「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」を「企業や農村、各関係機関、大学のキャンパス、社区(社会のコミュニティ)」など、全ての群衆に広くめていかなければならないと表明した。

たとえば、日本企業が中国企業と提携して中国で事業を進めていくとき、必ず日本企業側も「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」を学び遵守する義務を要求されることを意味する。

そもそも中国では政府機関や大学は言うに及ばず、各企業にも中国共産党委員会があり、それぞれに「書記」(社長より上のトップの権限を持つ)がいるが、今後は外資企業にも同様の書記がいて、「習近平思想」の遵守を日本側企業にも要求してくることになるだろう。

すでに大学では「習近平思想」をカリキュラムに組み入れることが始まっており、マルクス・レーニン主義教育のメッカである中国人民大学では、第19回党大会閉幕の翌日に「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」研究センターを設立した。

中国人民大学は、毛沢東が延安に移ってから、1937年に陝北公堂として設立したもので、以来、専らマルクス・レーニン主義思想を教える大学として有名だ(陝北は延安がある陝西省北部の意味)。1949年に新中国が誕生すると、毛沢東はその翌年の1950年、この大学を「中国人民大学」(北京)と名付けた。

第19回党大会が閉幕した翌日に「「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」研究センターを設立したということは、そのかなり前から「習近平思想」の具体的名称は決まっていたということになる。

新「中央宣講団」の第一回会議が終わると、CCTVでは企業や学生、あるいは農村や一般社会のコミュニティなどにおける「習近平思想を讃える」声を拾って報道したり、また成立メンバーが手分けして各地域に行って講演する様子などを盛んに報道している。

真っ赤な中国が、また始まる。

しかもそれを中国国内だけでなく、全世界に広めていくつもりだ。

CCTVは11月4日、習近平が「中国は、中国の夢だけでなく、世界各国の夢を実現するために尽力する」と言ったと報道した。これは「習近平思想を世界各国に浸透させていく」ことを意味する。これが「習近平の新時代」なのである。

関係国の中国関係者が「思想的に」違反すれば、何らかの処罰が待っているにちがいない。

中国とタイアップしたいと思っている(あるいはすでに提携している)日本企業関係者は、そのつもりで中国と接した方がいいだろう。

endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中