中国新「中央宣講団」結成――中国に進出する日本企業にも影響か
習近平は一層、王滬寧に頼って「初心、忘るべからず」を唱え続け、建党から直接「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」へと直結させようとしているのが見えてくる。
日本企業にも影響する王滬寧の意思表明
今も習近平のブレインである王滬寧は、同会議で、「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」を「企業や農村、各関係機関、大学のキャンパス、社区(社会のコミュニティ)」など、全ての群衆に広くめていかなければならないと表明した。
たとえば、日本企業が中国企業と提携して中国で事業を進めていくとき、必ず日本企業側も「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」を学び遵守する義務を要求されることを意味する。
そもそも中国では政府機関や大学は言うに及ばず、各企業にも中国共産党委員会があり、それぞれに「書記」(社長より上のトップの権限を持つ)がいるが、今後は外資企業にも同様の書記がいて、「習近平思想」の遵守を日本側企業にも要求してくることになるだろう。
すでに大学では「習近平思想」をカリキュラムに組み入れることが始まっており、マルクス・レーニン主義教育のメッカである中国人民大学では、第19回党大会閉幕の翌日に「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」研究センターを設立した。
中国人民大学は、毛沢東が延安に移ってから、1937年に陝北公堂として設立したもので、以来、専らマルクス・レーニン主義思想を教える大学として有名だ(陝北は延安がある陝西省北部の意味)。1949年に新中国が誕生すると、毛沢東はその翌年の1950年、この大学を「中国人民大学」(北京)と名付けた。
第19回党大会が閉幕した翌日に「「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」研究センターを設立したということは、そのかなり前から「習近平思想」の具体的名称は決まっていたということになる。
新「中央宣講団」の第一回会議が終わると、CCTVでは企業や学生、あるいは農村や一般社会のコミュニティなどにおける「習近平思想を讃える」声を拾って報道したり、また成立メンバーが手分けして各地域に行って講演する様子などを盛んに報道している。
真っ赤な中国が、また始まる。
しかもそれを中国国内だけでなく、全世界に広めていくつもりだ。
CCTVは11月4日、習近平が「中国は、中国の夢だけでなく、世界各国の夢を実現するために尽力する」と言ったと報道した。これは「習近平思想を世界各国に浸透させていく」ことを意味する。これが「習近平の新時代」なのである。
関係国の中国関係者が「思想的に」違反すれば、何らかの処罰が待っているにちがいない。
中国とタイアップしたいと思っている(あるいはすでに提携している)日本企業関係者は、そのつもりで中国と接した方がいいだろう。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。