韓国が目指す平昌「平和五輪」を北朝鮮が吹き飛ばす?
五輪開催を待つ平昌。韓国は安全をアピールしているが……
<平昌冬季五輪を狙った金正恩の妨害工作で、東アジアの緊張が臨界点に達しかねない>
来年2月9日から25日まで、韓国の冬のリゾート平昌で開催される冬季五輪。韓国が冬季五輪のホスト国になるのはこれが初めてだ。韓国政府は平昌五輪を南北交流の好機と位置付け、北朝鮮に対話を呼び掛けてきた。
だが北側がこのラブコールに応ずる気配はない。それどころか五輪つぶしの妨害工作を行う可能性もあり、北の出方次第では最悪の結果を招きかねない。
大統領選で南北対話の再開を公約に掲げた韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、北朝鮮がミサイル発射と核実験を繰り返しても、対話路線を捨てていない。9月に国連総会で行った演説でも北朝鮮に五輪参加を熱く呼び掛けた。
文政権は平昌五輪を南北共催の「平和五輪」にしようと、北朝鮮の馬息嶺スキー場を会場に加える計画や、女子アイスホッケーの南北合同チームの創設を提案してきた。
しかし北朝鮮は平昌パラリンピックへの参加こそ表明したが、五輪については態度を保留している。今のところ北朝鮮の選手はフィギュアスケートのペアが出場権を獲得しただけで、14年のソチ五輪に続き、今回も不参加になる可能性もある。
その場合、五輪開幕の直前か期間中に北朝鮮が何らかの挑発行動に出る危険性が高まる。
文が朝鮮半島の安定化に向けた機会とみる五輪は、北朝鮮にとっては豊かな南のイメージを傷つけ、国内外に自国の軍事的能力をアピールするチャンスにほかならない。北朝鮮は過去にも韓国で開催されたスポーツイベントで妨害工作を行ってきた。
87年11月、北朝鮮の工作員がミャンマー(ビルマ)沖のアンダマン海上を飛行中の大韓航空機を爆破、乗客104人、乗員11人が死亡した。これは88年のソウル五輪を前に韓国の安全性に不安を持たせるための工作とみられる。
02年6月にはサッカーの日韓ワールドカップ開催中、北朝鮮の警備艇が黄海上の軍事境界線である北方限界線を侵犯して韓国の哨戒艇に発砲、韓国軍の兵士6人が死亡する事件が起きた。