最新記事

日本企業

神戸製鋼所、底なしのデータ改ざん 「モノづくり日本」に傷

2017年10月31日(火)17時05分

10月31日、「モノづくり日本」の失墜につながるのか──。神戸製鋼所<5406.T>の製品データ改ざん問題が、底なし沼の様相を呈している。写真は神戸で24日撮影(2017年 ロイター/Thomas White)

「モノづくり日本」の失墜につながるのか──。神戸製鋼所<5406.T>の製品データ改ざん問題が、底なし沼の様相を呈している。当初、アルミ・銅など一部門に限定されていたデータ改ざんは、機械事業部門や子会社などでも行われていたことが発覚し、グループ全体にまん延している実態が浮かび上がった。

信用の喪失は、神戸製鋼だけに止まらない。高品質を武器に世界を席巻した日本の「モノづくり」ブランドそのものが、傷を負う事態に陥っている。その広がりと深さを同社の地元・神戸に探った。

すそ野広い鉄鋼業、不安広がる取引先

第48回衆院選の開票が進んでいた10月22日夜。兵庫県内の小選挙区で圧勝した与党候補者の選挙事務所で、バンザイの歓声が沸き上がった。超大型台風21号がもたらした暴風雨もいとわず、集まった支援者で熱気を帯びる事務所。その一角で、数人の男たちが額を寄せ合った。

「神鋼は大丈夫やろか」、「影響ないやろか」、「川崎(博也会長兼社長)はあかんな」。

いずれも神戸製鋼の神戸製鉄所(神戸市)や加古川製鉄所(加古川市)と取引する地元企業の社長である。

神鋼の中核である鉄鋼事業は、この2カ所が生産拠点。次々と明らかになる製品データ改ざんは、アルミ・銅事業がほとんどを占め、鉄鋼部門では鉄粉などに限られている。

だが、地元企業の懸念は晴れない。「鉄は関係ないとは言えん。神戸製鋼ブランドを背負う以上、私らも同じや。お客さんから『神鋼の製品は買わん』と言われたら、鉄といえども影響ないわけがない」(取引企業社長)と、打撃の波及を心配する。

産業の基幹である鉄鋼業は、すそ野が広い。高炉の操業から冷却装置、耐火煉瓦などの設備や部品の点検・補修、原材料や鋼材の搬出入など、製鉄所の運営には構内作業を請け負う数十社に及ぶ協力会社の存在が欠かせない。それだけにとどまらず、巨大な生産設備を維持・刷新するための産業用機械を手掛ける製造会社や、製鉄所で生産された鋼材をもとに部品を作る金属加工会社もすそ野に連なる。

帝国データバンクの調査によると、神鋼グループの取引先は全国で6123社。全体の56%が売上高10億円未満の中小企業だ。本社所在地であり製鉄所や研究所も立地する兵庫県が全国で2番目に多い997社、隣接する大阪府は最も多い1146社の取引先を抱える。大阪・兵庫で全体の35%を占める。

「神鋼が打撃を受ければ、最も大きな影響を受ける地域だ」と、帝国データバンク神戸支店情報部の松田剛氏は言う。

すでに神鋼から鋼材を仕入れる金属加工会社には、納入先企業から部品の品質や安全性を確かめる問い合わせも届いている。大手銀行の中には、神鋼の取引先の与信管理に注意を払うよう支店に指示を出したところもある。

「『神鋼の部材を使ってくれるな』との要求が、納入先から来るかもしれない」と取引企業社長は懸念する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

コカ・コーラボトラーズジャパン、主要製品を値上げへ

ビジネス

訂正-インタビュー:設立5年で預かり資産500億円

ワールド

イラン外相が23日に訪中=中国外務省

ワールド

米、インドに電子商取引市場の開放要求へ FT報道
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 2
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 3
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボランティアが、職員たちにもたらした「学び」
  • 4
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 5
    遺物「青いコーラン」から未解明の文字を発見...ペー…
  • 6
    パウエルFRB議長解任までやったとしてもトランプの「…
  • 7
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 8
    「アメリカ湾」の次は...中国が激怒、Googleの「西フ…
  • 9
    なぜ? ケイティ・ペリーらの宇宙旅行に「でっち上…
  • 10
    コロナ「武漢研究所説」強調する米政府の新サイト立…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 7
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中