最新記事

映画

文在寅、現職大統領で初訪問 支援と不介入を約束した釜山国際映画祭

2017年10月30日(月)08時17分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)

日本人としては、それだけ韓国人の目に留まる優秀作品が多かったのかと嬉しくなる一方で、韓国内の一部の意見としては、映画の多様性の面で不満が上がっていたようだ。
また、映画「ブラック・スワン」の監督として知られるダーレン・アロノフスキー監督の最新作「マザー!」主演のジェニファー・ローレンスが映画祭参加のため、去年の年末に続き2度目の訪韓が予定され、今年の映画祭の目玉ニュースと期待されていたが、直前で訪韓を取りやめるなど寂しいニュースもあった。

寂しいニュースといえば、韓国政府から映画祭への支援金が減少の一途をたどっている。一番のピークだった2014年には15億ウォン(約1億5千万円)にものぼった支援金も、翌年2015年には8億ウォン(約8千万円)。今年はさらに減少し7億6千万(約7600万円)と、3年前の半分にまで減ってしまった。

文在寅が現職の大統領として初の訪問

そんな中、今年一番注目を集め、映画祭を盛り上げた話題と言えば、「文在寅(ムン・ジェイン)大統領の映画祭訪問」だ。今まで大統領が任期中に映画祭を訪れたことはなかった。さらに、大統領はこれからも持続的な支援を強く約束し、「過去"左派の映画祭"だと、支援を口実に政府や釜山市が干渉をしてきた。しかし、今後は支援はするが、運営に関する口出しはしない」と、語った。

そもそも去年、ボイコットが巻き起こった理由は、朴政権当時の行政が映画祭という大衆文化に介入しコントロールしようとしたことだった。セウォル号沈没事故を扱ったドキュメンタリー映画「ダイビングベル セウォル号の真実」が事実を歪曲した内容だとし、映画祭での上映を止めるよう指示したが、映画祭の実行委員会はそれを無視し上映を強行して騒動となった。文大統領は、それに対し当時の行政側を批判したうえで今後の支援の約束したのだ。この発言は、今まで戦ってきた釜山国際映画祭関係者及び、韓国の映画人たちにとってとても意味のあるものとなった。

文大統領は慶尚南道の巨済島出身で、比較的近い韓国本土の釜山に強い思い入れがあるようだ。大統領になる前にも映画祭に2度も訪れている。今回、文大統領は15日上映された「女は冷たい嘘をつく(原題:ミッシング 消えた女)」を一般観客と共に鑑賞し、上映後の監督・出演者のQ&Aにもともに参加。観客らも大いに沸き、文大統領への歓迎ぶりからその人気が伺われた。実際、釜山国際映画祭訪問のニュースが報道された翌日の16日には、13日(14,15日は土日。週明け16日の支持率を確認)に比べ文大統領の支持率が0.8%アップ、69.1%となった。

즐겁고도 뜻깊은 남다른 주말을 보냈다. 더 열심히 해야겠다. 뭐든.. #luckyme❤️

Hjkさん(@rovvxhyo)がシェアした投稿 -


「女は冷たい嘘をつく」主演のコン・ヒョジンのセルフィーに応じた文在寅大統領

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    注目を集めた「ロサンゼルス山火事」映像...空に広が…
  • 10
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中