最新記事

独裁

北朝鮮の金正恩が愛する実妹ヨジョン 党中枢部入りが意味するもの

2017年10月11日(水)18時40分


ポニーテールと黒スーツ

ポニーテールに黒のスーツとハイヒール姿という如才ない装いがトレードマークの与正氏が、初めて北朝鮮の国営メディアに登場したのは2011年12月。父親の正日氏の葬儀で、涙を流しながら兄の正恩氏のかたわらに立っている姿だった。

以来、与正氏は兄と一緒に姿を見せたり、コンサートで笑顔を見せたり、白馬に乗ったり、国家行事で兄の代わりに花束を受け取ってほほえんだりする姿を見せている。

国営メディアで映し出される与正氏の若さと陽気な人柄は、公務で正恩氏に従う浮かない顔の軍高官や年老いた党幹部らとは全く対照的である。

かつては写真の後列に時折写っているだけだったが、最近では与正氏は国営メディアによる写真の最前列中央に移動しており、注目を浴びるような数多くの国家的イベントで兄を手助けしている。

建国の父である故金日成(イルソン)主席生誕105周年で4月に開催された大規模な軍事パレードでは、スピーチの準備をする兄に書類を手渡そうと柱の陰から駆け寄る与正氏の姿が見られた。

与正氏は同月、平壌における建設プロジェクトの落成式でも正恩氏のそばに立っていた。

2016年3月には、正恩氏が核弾頭の小型化に成功したと主張した核・ミサイル開発現場への視察にも与正氏は同行している。

「与正氏が30人強で構成される北朝鮮の最高意思決定機関に正式に加入したことは、政権内での彼女の役割が一段と拡大することを意味している」との見方を、韓国のシンクタンク「世宗研究所」の張成昌・上級研究員は示した。

ベールの陰で

与正氏について、年齢以外で知られていることはほとんどない。同氏が初めて公に確認されたのは2011年2月、もう1人の兄である金正哲(ジョンチョル)氏と一緒にシンガポールでエリック・クラプトンのコンサートに現れたのを、韓国のテレビ局がとらえたときだった。

与正、正哲、正恩の3氏の母親は高英姫氏である。3人のなかで年長の正哲氏は政治に関与せず、バンドでギターを弾くなど、平壌で静かな生活を送っていると、韓国に亡命した北朝鮮の太永浩(テ・ヨンホ)元駐英公使は明かしている。

与正氏は2014年に党の宣伝扇動部副部長に就任し、メディアや芸術や文化を通して思想的メッセージを発信していた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

S&P、アダニ・グループ3社の見通し引き下げ 米で

ワールド

焦点:ウクライナ巡り市民が告発し合うロシア、「密告

ワールド

台湾総統、太平洋3カ国訪問へ 米立ち寄り先の詳細は

ワールド

IAEA理事会、イランに協力改善求める決議採択
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中