最新記事

アメリカ政治

ツイートの影に隠れた「トランプ効果」 アメリカ社会に変化の兆し

2017年10月2日(月)10時37分

9月28日、トランプ米大統領(写真)は目玉公約こそ達成できていないが、実は既にさまざまな形で米国民の暮らしを変え始めている。ワシントンで1月撮影(2017年 ロイター/Carlos Barria)

トランプ米大統領は目玉公約こそ達成できていないが、実は既にさまざまな形で米国民の暮らしを変え始めている。就任からの9カ月でトランプ氏は積極的に規制撤廃に動き、大統領命令を発したり環境基準を修正してエネルギーから航空まで各種業界のルールを書き直してきた。

政権は内部で足並みがそろわず、トランプ氏自身の決定も衝動的で気まぐれな面があるとはいえ、米国の社会と経済への影響は幅広く、持続性を持つ可能性がある。

こうした変化の一部は大きなニュースとして伝えられている。しかしその多くは、日々の論争やトランプ氏によるツイッターの「炎上発言」などに紛れて気づかれないうちに進行している。

例えば、石油はいつの間にか「ダコタ・アクセス・パイプライン」を通って輸送されており、米国内で生活する不法移民の拘束件数は増加した。石炭採掘に開放される連邦政府所有地はより多くなっている。

もう少し細かい面でも、オバマ前政権時代に制定されたいくつかの規則が撤回されたり、導入が先送りされた。これには退職者の貯蓄を無節操な金融アドバイザーから守るためものや、インターネットのプロバイダーによる顧客の個人情報利用を制限したものなどが含まれる。

いずれもトランプ氏が約束した派手な政策変更に比べると目立たないものの、実際の効果という点では遜色はない。保守系シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ政策研究所(AEI)の政治アナリスト、ノーム・オーンスタイン氏は「トランプ氏はすさまじいほど多くの政策を生み出し、同時に解体している」と指摘した。

トランプ氏は、医療保険制度改革(オバマケア)改廃やメキシコとの国境の壁建設などの問題で議会の承認を得られず窮地に追い込まれたことで、行政権限の行使に活路を見出した。

その権限の範囲内でこれまでに数百の規制や規則を撤廃し、47の大統領命令に署名したほか、オバマ前政権終盤に承認された規制を無効にするために「裏技」とも言える議会評価法を14回も適用した。この法律は、16年前に一度使われて以来ずっとほこりをかぶっていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ASEAN、ミャンマー選挙に全関係者の参加望む=タ

ビジネス

鴻海、日産への関心保留 ホンダとの協議見極め=ブル

ビジネス

独小売業の業況感が悪化 年末商戦も盛り上がらず=I

ビジネス

中国国債利回りが軒並み低下、人民銀の警告に取り合わ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:アサド政権崩壊
特集:アサド政権崩壊
2024年12月24日号(12/17発売)

アサドの独裁国家があっけなく瓦解。新体制のシリアを世界は楽観視できるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 2
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達した...ここまで来るのに40年以上の歳月を要した
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 7
    電池交換も充電も不要に? ダイヤモンドが拓く「数千…
  • 8
    「均等法第一世代」独身で昇進を続けた女性が役職定…
  • 9
    クッキーモンスター、アウディで高速道路を疾走...ス…
  • 10
    米電子偵察機「コブラボール」が日本海上空を連日飛…
  • 1
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 2
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いするかで「健康改善できる可能性」の研究
  • 3
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達した...ここまで来るのに40年以上の歳月を要した
  • 4
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 5
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 6
    電池交換も充電も不要に? ダイヤモンドが拓く「数千…
  • 7
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 8
    ウクライナ「ATACMS」攻撃を受けたロシア国内の航空…
  • 9
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 10
    【クイズ】アメリカにとって最大の貿易相手はどこの…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 7
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 8
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 9
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中