最新記事

自動車

BMWとベンツが電気自動車の量産戦略 テスラに対抗へ

2017年10月9日(月)11時59分

だが全体の戦略としては、大量生産ラインをオーバーホールし、必要があれば生産を急拡大する方向だ。

EVの需要は、価格が高く充電設備が十分でないことから低迷している。だがそれは、バッテリー価格の下落が続けば変わるかもしれない。

「バッテリーのコストが下がってきている。収益率を上げることができるだろう。その点では、われわれは良い競争の立ち位置にある」と、メルセデス・ベンツを所有するダイムラーのディーター・ツェッチェ最高経営責任者(CEO)はロイターに語った。

メルセデス・ベンツは、これと並行してEVと自動運転車専用のプラットフォームの開発も進めているが、投入時期はEVの第一波が広まった後になる。

もしテスラの高級自動車市場への量産攻勢が成功すれば、最も打撃を受けるのは、メルセデス・ベンツとBMW,フォルクスワーゲン(VW)傘下アウディのドイツ3大高級車メーカーだ。

テスラは、赤字ではあるが昨年は8万3922台のEVを生産し、EV販売台数ではすでにこれら3メーカーを大きく上回っている。BMWは昨年「i3」を2万5528台販売した。メルセデスは、BクラスのEV販売台数を公表していない。両社とも、全体では昨年それぞれ200万台以上を販売している。

独メーカーはこれまで、バッテリー価格が高すぎて利益を出すのが困難だとして、EV量産に抵抗してきた。

バッテリー価格は下落したが、それでも航続距離500キロのバッテリー価格は1万4000ドル(約160万円)で、一方の内燃エンジン価格は5000ドルを下回ると、バーンスタインのアナリストは計算している。

根本的な欠陥

中国の新興EVメーカー「フューチャー・モビリティ」のカーステン・ブライトフェルトCEOは、新たなEVとして、また新たな消費者体験のプラットフォームとしてのポテンシャルを解き放つには、自動車の概念は再考されなければならないと話す。

「量産体制を適合させて電気自動車、ディーゼル車、プラグインハイブリッド車を生産しようというのは、根本的に間違っている。なぜなら、妥協した製品になるからだ」と、ブライトフェルト氏はロイターに語った。

ブライトフェルト氏はかつてBMWのEVトップ技術者で、「i8」の開発を担当した。その後、量産自動車メーカーはもはやEVのデザインを主導できないと感じて退職した。

ブライトフェルト氏は、今後起きるEV需要の急増に、既存車の車体に電気モーターを搭載することで対応しようという独メーカーの戦略は、誤りだとみている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン

ビジネス

ECB総裁、欧州経済統合「緊急性高まる」 早期行動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 10
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中