BMWとベンツが電気自動車の量産戦略 テスラに対抗へ
だが全体の戦略としては、大量生産ラインをオーバーホールし、必要があれば生産を急拡大する方向だ。
EVの需要は、価格が高く充電設備が十分でないことから低迷している。だがそれは、バッテリー価格の下落が続けば変わるかもしれない。
「バッテリーのコストが下がってきている。収益率を上げることができるだろう。その点では、われわれは良い競争の立ち位置にある」と、メルセデス・ベンツを所有するダイムラーのディーター・ツェッチェ最高経営責任者(CEO)はロイターに語った。
メルセデス・ベンツは、これと並行してEVと自動運転車専用のプラットフォームの開発も進めているが、投入時期はEVの第一波が広まった後になる。
もしテスラの高級自動車市場への量産攻勢が成功すれば、最も打撃を受けるのは、メルセデス・ベンツとBMW,フォルクスワーゲン(VW)傘下アウディのドイツ3大高級車メーカーだ。
テスラは、赤字ではあるが昨年は8万3922台のEVを生産し、EV販売台数ではすでにこれら3メーカーを大きく上回っている。BMWは昨年「i3」を2万5528台販売した。メルセデスは、BクラスのEV販売台数を公表していない。両社とも、全体では昨年それぞれ200万台以上を販売している。
独メーカーはこれまで、バッテリー価格が高すぎて利益を出すのが困難だとして、EV量産に抵抗してきた。
バッテリー価格は下落したが、それでも航続距離500キロのバッテリー価格は1万4000ドル(約160万円)で、一方の内燃エンジン価格は5000ドルを下回ると、バーンスタインのアナリストは計算している。
根本的な欠陥
中国の新興EVメーカー「フューチャー・モビリティ」のカーステン・ブライトフェルトCEOは、新たなEVとして、また新たな消費者体験のプラットフォームとしてのポテンシャルを解き放つには、自動車の概念は再考されなければならないと話す。
「量産体制を適合させて電気自動車、ディーゼル車、プラグインハイブリッド車を生産しようというのは、根本的に間違っている。なぜなら、妥協した製品になるからだ」と、ブライトフェルト氏はロイターに語った。
ブライトフェルト氏はかつてBMWのEVトップ技術者で、「i8」の開発を担当した。その後、量産自動車メーカーはもはやEVのデザインを主導できないと感じて退職した。
ブライトフェルト氏は、今後起きるEV需要の急増に、既存車の車体に電気モーターを搭載することで対応しようという独メーカーの戦略は、誤りだとみている。