ヘロインなど「オピオイド系薬物中毒」 米国の地域社会に深刻な影
インディアナ郡の救急サービスも、やはりオピオイド中毒のまん延で財務面で苦境に置かれている。同郡の救急サービスの主力となっている非営利団体Citizens' Ambulance Serviceでオペレーション担当ディレクターを務めるランディ・トーマス氏によれば、2016年以来、オピオイド中毒関連の呼び出しだけで、10万ドル以上の損失が出ているという。
オピオイド過剰摂取の患者が病院に搬送された場合にのみ報酬を得る仕組みだが、同氏によれば、過剰摂取の薬物に適切な治療を施した場合でも、彼らが病院に行くことを拒否すれば報酬は得られないという。
オピオイド系薬物の過剰摂取から命を守るナロキソン(別名「ナルカン」)の投与を受けて死の淵から生還した人々は、意識を回復すると怒り出し、攻撃的になり、病院への搬送を拒むことが多い、と同氏は言う。
オピオイド中毒関連コストが膨らむなかで、インディアナ郡のベイカー郡政委員は、今後どのような状況になるか確信が持てないという。州政府、あるいは連邦政府による介入がない限り、郡としてはサービスを削減するか増税するしかない、とベイカー氏は言う。
「これによって完全に基準が変わってしまった。予算管理における予測不可能性がこれまでとまったく違うレベルになった」とベイカー氏は話している。
オピオイド中毒禍のせいで郡財政が大きな問題に直面しているとはいえ、ベイカー氏にとって何よりも辛いのは、それによって奪われた人命だ。昨年秋、フェンタニルの過剰摂取で甥を失っている。
23歳だった甥の死について語っていたベイカー氏は、気持ちを整理しようと黙り込んだ。「何よりも辛く、困難な経験だ。世界の誰にも、このような思いを味わってほしくない」
(翻訳:エァクレーレン)
[インディアナ(ペンシルバニア州)/チリコシ(オハイオ州) 19日 ロイター]