ヘロインなど「オピオイド系薬物中毒」 米国の地域社会に深刻な影
9月19日、米国でオピオイド系鎮痛剤の乱用による死者数が増加するなか、この新たな薬物危機の最前線に立つ地域社会が、財政負担という思わぬ打撃に直面している。写真は8月、同系薬物中毒によるものとみられる遺体のCTスキャンを調べる男性。ペンシルバニアで撮影(2017年 ロイター/Adrees Latif)
米国でオピオイド系鎮痛剤の乱用による死者数が増加するなか、この新たな薬物危機の最前線に立つ地域社会が、財政負担という思わぬ打撃に直面している。
オハイオ州コロンバスから南に1時間の距離に位置する人口7万7000のロス郡は、オピオイド系鎮痛剤の乱用に関連する死亡件数が急増している。2009年の19人に比べ、昨年は44人に。薬物乱用のまん延は、人命を奪うだけでなく、郡の財政にも負担をかけている。
同郡当局者によれば、州の養護施設に収容されている児童200人のうち、両親がオピオイド中毒に陥っている割合は、5年前の約40%から約75%に上昇。こうした児童の場合、専門家によるカウンセリングや、長期収容や治療が必要になるため、養護コストがかさむという。
これが原因で、ロス郡の児童養護関連予算は130万ドル(約1億4600万円)から約240万ドルへ2倍近くに跳ね上がった、とダグ・コルコラン郡政委員は語った。
一般予算がわずか2300万ドルの同郡にとって、これは大きな財政負担だという。現在、郡政委員らは、青少年向けプログラムや経済開発スキームなど、膨れあがるオピオイド中毒対策コストを賄うために削減できる予算項目はないか検討している。
「郡予算のうち、削減できる裁量部分はきわめて少ない。非常に厳しい」とコルコラン氏は言う。
全米の市町村や郡が、2015年だけで3万3000人の犠牲者を出した薬物中毒危機による財政コスト増への対処に頭を悩ませている。地方自治体の当局者や郡予算の専門家ら20数人へのインタビューとデータからそうした状況が明らかになった。
これらは、地方自治体に与える財政影響を垣間見せてくれるが、完璧な全体像の把握には程遠い。というのも、郡や州からの情報を整理した、中枢となるべきデータベースが存在しないからだ。したがって、問題の本当の大きさは依然として捉えることが出来ない。
主に処方薬としての鎮痛剤であるヘロイン、フェンタニル(モルヒネより50─100倍強力な薬剤)を中心とするオピオイド系薬物は、米国の「薬物過剰摂取」問題に拍車をかけている。
トランプ大統領は先月、オピオイド中毒を「国家的な緊急事態」と呼んだが、まだ国家非常事態宣言は発令されていない。もしそのような動きがあれば、各州は対策のために連邦予算を利用できるようになる。