ヘロインなど「オピオイド系薬物中毒」 米国の地域社会に深刻な影
全体像の把握はこれから
薬物過剰摂取の増加に取り組む郡は、緊急通報の増加、監察医や検視官への支払い増加、刑務所や裁判所の過密状態によるコスト高に直面している、と全米3069の郡や地方自治体を代表する全米カウンティ協会のエグゼクティブ・ディレクター、マット・チェイス氏は語る。
同協会が7月に年次総会を開いた際に、会場を埋めた参加者の前で、各郡当局者がオピオイド中毒対策のノウハウ、危機がもたらした財政問題を発表した。危機が郡予算に与えた財政上の影響をより完全に把握するため、全米カウンティ協会は初期段階の情報収集に努めている、とチェイス氏は語る。
山がちの地形で村落地域を主体とするペンシルバニア州インディアナ郡の状況は、オピオイド中毒が、いかに地方におけるサービス及び財政を圧迫しているかを物語っている。
郡庁所在地インディアナには、現代的な大学のキャンパスが立地し、メインストリートにはレストランが並び、星条旗が飾られている。
だが、静謐な外観の下では、オピオイド中毒が至るところでまん延している、と郡の麻薬対策タスクフォースを率いる秘密捜査官デビッド・ロスティス氏は語る。
ロスティス氏の車に記者が同乗した際、彼は次々に様々な場所を示してそれぞれ説明した。それらは、医師がセックスのためのオピオイド系薬剤を売っていたビル、ティーンエイジャーが過剰摂取で死亡した裕福な家族の住む家、最近ドラッグ絡みの殺人事件が起きた小道、過剰摂取のため女性が車中で死亡しているのに道行く人々が気づかなかったガソリンスタンド、などだ。
インディアナ郡における薬物過剰摂取による死亡率は昨年、人口10万人当たり50.6人だった。これは州平均の36.5人を大きく上回っている。
同郡における検視や毒物検査のコストは、2010年の約8万9000ドルから2016年には16万5000ドルへと、6年間で2倍近くに膨れ上がった。
裁判コストも増大している。地元の当局者によれば、これは主として、オピオイド中毒関連の犯罪の訴追及び被告人のための公選弁護人費用のためだ。
インディアナ郡政府の上級幹部マイク・ベイカー氏は、検視官報酬コストの増大を危険準備金で賄っていると言う。こうした準備金の拠出は、2014年の1万9000ドルから、昨年は6万3000ドルに急増した。2014年、同郡における薬物関係の死亡数は10件だったが、2016年には53件に増えている。