ヘロインなど「オピオイド系薬物中毒」 米国の地域社会に深刻な影
インディアナ郡から南に約480キロ離れたウェストバージニア州マーサー郡では、オピオイド中毒関連の刑務所費用が、人口6万2000人を抱える同郡の1200万ドルという小規模な年間予算を侵食している。
同郡における今年の刑務所費用、2015年に比べて10万ドル増加する勢いだ。ここでは収容者1人あたり1日48.50ドルを刑務所に支払っているが、郡当局のデータによれば、今年の「収容者・日」は、2015年に比べ、2000以上も増えそうだという。
「こうした刑務所費用の増加分の少なくとも90%はオピオイド中毒関連だ」と語るのは、同郡の郡政委員で、全米規模の郡オピオイド中毒対策タスクフォースに参加するグレッグ・パケット氏。「毎月、刑務所のために支出する金額は、経済開発、保健部門や救急サービスの費用の総計よりも多くなっている」
ウェストバージニア州はオピオイド危機の最前線にいる。
2015年に、同州は3年連続で、薬物過剰摂取による死亡率で全米1位を記録。2016年の暫定数値では、薬物過剰摂取による死亡が883件記録されており、そのうち755件は少なくとも1種類のオピオイド系薬物が関連していた(2014年は全体で629件だった)。
検視のビジネス化
シドニー・ゴールドブラット氏、カーティス・ゴールドブラット氏の父子ほど、オピオイド中毒について詳しい人はほとんどいない。
ゴールドブラット父子は、ペンシルバニア州ウィンドバーを拠点に、検視業務のForensicDXと薬物検査業務のMolecularDxという2つの企業を経営している。両社は、インディアナ郡を含む州内10郡で検視業務を請け負っており、遺体1体当たり2000─3000ドルの報酬を得ている。
ゴールドブラット父子によれば、2014年に彼らが対応した死亡例のうち、薬物過剰摂取によるものは約40%だった。昨年はこれが62%に跳ね上がった。父親のゴールドブラット氏は50年にわたって検視業務に携わっているが、これほどの規模の薬物中毒の蔓延は経験がないという。彼が検視を始めた頃は、薬物の過剰摂取はまれだった。
ゴールドブラット父子が2014年にForensicDxを開業したとき、スタッフは3人で、業務の範囲は3つの郡に留まっていた。現在ではスタッフが7人、10郡に事業を拡張。主として薬物関連の需要に応えるためだという。