最新記事

経済制裁

ロシアから燃料密輸? 北朝鮮船、行き先変更など「疑惑の航路」

2017年9月22日(金)16時09分

「燃料は、中国企業に売った」とセルビン氏は同社が仲介した複数の取引について語った。同氏は、北朝鮮のエネルギー部門で働き、北朝鮮に輸出する燃料調達を行っているとして、米政府のブラックリストに登録されている。

「(積荷を)コントロールすることはできない」と同氏は言う。

セルビン氏は、トランスアトランティック社が石油を積んだ船舶名を明らかにしなかったが、ウラジオストクの船舶サービス筋によると、その中にマドゥサン号も含まれていた。

船荷証券によると、マドゥサン号の積荷の受取人は「LLCスカイ・シッピング」だが、ロイターはそのような企業に関する情報を見つけることができなかった。

ベルミュールは、カーゴの最終的な行き先について知る術がなく、制裁逃れと知りながら協力した事実はないと述べている。

IPCは、取材の求めに応じなかった。同社の親会社で、バミューダに登録されている「アライアンス・オイル・カンパニー」は、IPCが制裁対象に指定された際に、北朝鮮企業と契約関係にあったことはないと否定していた。

米財務省と国務省は、ロイターの質問に回答しなかった。

ロシア外務省は、北朝鮮への石油輸出に関する質問に回答しなかったが、制裁決議は順守していると述べた。ロシア税関は、国境を超える物のやりとりについての情報は提供できないと語った。

ロイターのデータによると、米政府がIPCを制裁対象に追加した後、ウラジオストクに寄港していた北朝鮮船籍の船はすべて去った。ウラジオストクの船舶輸送関係者によると、その際積荷は積んでいなかったという。ロイターは、この事実を関係書類で確認した。

ロシアから北朝鮮に向けた石油や石油関連製品の輸出は、北朝鮮の唯一の主要同盟国である中国からの輸出に比べるとかなり小規模だ。中国は、北朝鮮向け輸出を抑制し始めた一方で、ロシアの対北朝鮮貿易は2017年第1・四半期に全品目合わせて2倍以上に膨らみ、3140万ドル(約35億円)に達した。

ロシアの対北朝鮮貿易は、北朝鮮による相次ぐミサイル発射や、同国が水素爆弾と主張する核実験の強行で、より厳しい目にさらされている。

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

Polina Nikolskaya

[モスクワ 20日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ショルツ独首相、2期目出馬へ ピストリウス国防相が

ワールド

米共和強硬派ゲーツ氏、司法長官の指名辞退 買春疑惑

ビジネス

車載電池のスウェーデン・ノースボルト、米で破産申請

ビジネス

自動車大手、トランプ氏にEV税控除維持と自動運転促
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中