最新記事

北朝鮮問題

バノン氏の「トランプは習近平を誰よりも尊敬」発言とトランプ国連演説の整合性は?

2017年9月20日(水)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

アメリカのトランプ大統領と中国の習近平国家主席(7月、独ハンブルクで) Saul Loeb-REUTERS

9月12日、辞任したバノンが講演で「トランプは世界のどの首脳よりも習近平を尊敬している」と述べた。19日、国連総会でトランプは北朝鮮を「完全破壊」と発言。これは習近平の意向とは対立する。整合性は?

スティーブ・バノン氏の香港での講演――ブルームバーグ

すでにトランプ政権から離れた(事実上、更迭された)元主席戦略官のスティーブ・バノン氏が、9月12日、香港で開かれた講演で、「トランプ米大統領は中国の習近平国家主席を世界の他のどの首脳よりも尊敬している」と述べた。アメリカのブルームバーグが"Trump Respects China's Xi More Than Other Leaders, Bannon Says"というタイトルで伝えた。

日本語では「トランプ米大統領は中国国家主席を他の首脳より尊敬――バノン氏」として、英文の一部が抜粋してある。

それによれば、中国最大の国営証券会社、中信証券(CITIC証券)の海外部門であるCLSAが主催したフォーラムで、バノン氏は「トランプ大統領と習主席の関係は非常に強力で、(トランプ)大統領が中国主席よりも尊敬するリーダーはいないと思う」と述べたという。このフォーラムは報道陣には非公開だったが、参加した6人がバノン氏の発言を明らかにしたとのこと。

トランプは習近平が気に入っている

筆者は『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』を書いている内に、最初はトランプが習近平に仕掛けてくる数々のディール(取引)に関して「褒め殺しか」、「世紀の大芝居か」と位置付けていたのだが、終いには、「いや、トランプは本当に習近平のことが気に入っているのかもしれない」という思いに追い込まれていった。

常に「なぜだ?」を追い求めて、トランプの言動を記している内に、どうしても「トランプが習近平のことを気に入っている」と考えないと、整合性がつかないところに辿り着いてしまうのだ。拙著のp.92に、その戸惑いを記した。

それが今ごろになって、トランプを大統領に仕立て上げた黒幕であり、トランプを陰で操っていた一人であったバノン氏によって証言されたのだから、非常にありがたい。これ以上の信憑性はないだろう。

「トランプ・習近平」電話会談

トランプは9月18日、習近平と電話会談をした。中国の中央テレビ局CCTVや中国共産党新聞が伝えた。

それによれば、両者は互いに相手を褒め称え、予定されているトランプ訪中について話し合ったという。北朝鮮問題に関しては、「現在の朝鮮半島情勢に関して意見を交換した」としか報道していない。

一方、大陸以外の中文メディアによれば、「北朝鮮に対し国連制裁を通して圧力を掛け続けることについて意見を交換し、(習近平は)承諾した」とのこと。

さらに注目すべきは、トランプが習近平に「米中ともそれぞれ重要な国内日程がある。それが順調に進むことを祈っている」と電話で伝えたことで、中国における重要な国内日程とは、言うまでもなく10月18日に開催される第19回党大会のことである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、イラン核施設への限定的攻撃をなお検討=

ワールド

米最高裁、ベネズエラ移民の強制送還に一時停止を命令

ビジネス

アングル:保護政策で生産力と競争力低下、ブラジル自

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪肝に対する見方を変えてしまう新習慣とは
  • 3
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず出版すべき本である
  • 4
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 5
    トランプが「核保有国」北朝鮮に超音速爆撃機B1Bを展…
  • 6
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 7
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 8
    ロシア軍高官の車を、ウクライナ自爆ドローンが急襲.…
  • 9
    ロシア軍が従来にない大規模攻撃を実施も、「精密爆…
  • 10
    ロシア軍、「大規模部隊による攻撃」に戦術転換...数…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 9
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 10
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 9
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 10
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中