中国ミレ二アル世代にまん延する自虐的「喪の文化」
「喪」の文化はポーズや気取りかもしれないが、高学歴の若者の一部に見られる絶望感は、安定性を重視する習近平国家主席とその政権にとって大きな懸念事項である。
5年に1回開催される今秋の党大会が近づくにつれ、メディアやインターネットへの検閲・取り締まりが強化されているが、ネット上の視聴覚コンテンツに「前向きな活力」を求める規則が6月に発布されたことを受けて、その対象は消極的な言説にまで広がっている。
6月後半、半人半馬の元喜劇俳優を主人公とする米国のアニメシリーズ「ボージャック・ホースマン」が中国のオンライン番組配信「愛奇芸(iQiyi)」から削除されたことについて、若いネット市民の一部から不満の声が上がった。同シリーズは、主役の自己嫌悪と冷笑的な姿勢で「喪」世代に人気を博していた。
短文投稿サイト「微博(ウェイボー)」を使用するビンセントと名乗る27歳のユーザーは、このニュースを伝える投稿に「前向きな活力なんてどうでもいい」とコメントした。
iQiyiの広報担当者は、「ボージャック・ホースマン」を削除する決定は、「社内プロセスの問題」によるものだと述べたが、詳細は明らかにしていない。
中国ネットサービス大手の騰訊控股(テンセント・ホールディングス)<0700.HK>は、「喪」の文化に対する反撃に着手している。同社は「燃」という中国語(字義通りでは「燃える」という意味であり、楽観主義という含みがある)を軸として、「あらゆる冒険は生まれ変わるチャンス」などのスローガンを掲げる広告キャンペーンを開始した。
<「一人っ子世代」の悲哀>
だが、「喪」の文化を崩していくのはなかなか難しい。
「喪」は、成算や労力の多寡を問わず目標を達成しようとする、現在繁栄している中国の都市文化に対する反乱でもある。これに結びついているのが、成功を期待する社会・家庭からの強いプレッシャーである。一人っ子政策世代の一員として、高齢化する両親や祖父母を扶養することを期待されているという事情がこれには通常伴っている。
ブラックユーモアを帯びていることが多い前出のZhaoさんによる投稿は、「微博」で約5万人ものフォロワーを集めている。彼女は昨年、このテーマで本を書いた。「いつも成功を目指すことのできない人生」というタイトルだ。