最新記事

中国社会

中国ミレ二アル世代にまん延する自虐的「喪の文化」

2017年9月12日(火)09時09分

18歳から35歳くらいまでの中国ミレニアル世代の人口は、約3億8000万人。先行世代には思いもよらなかったような機会にも恵まれているが、彼らが抱いていた希望は実現困難になりつつある。

今年、大卒者の平均初任給は16%下落し、月4014元(約6万7000円)になった。国内大学の卒業者が過去最高の800万人(1997年の10倍近い)に達し、就職競争が激化しているためだ。

Zhaoping.comの調査によれば、エリート層である「ウミガメ」(多くは多額の費用をかけて海外留学し帰国した者)でさえ、2017年卒業者の半数近くは、月6000元を下回っている。回答者の70%は、給料が「期待を大きく下回る」と答えている。

マイホーム購入はほぼ中国全土で共通する夢だが、北京、上海、深センといった大都市で、より高級な住宅への住み替えはますます難しくなりつつある。

中国不動産関連サイト最大手のFang.comによれば、北京の中古住宅市場では2016年に価格が36.7%も跳ね上がり、2寝室の平均的な住宅価格は約600万元(約1億円)に達した。これは同都市の住民1人あたり平均可処分所得の約70倍である。ちなみにこの比率は、ニューヨーク市では25倍に満たない。

Ziroom.comによれば、北京の賃借人は推定800万人で、その大半がミレニアル世代とされているが、E-House China R&D Instituteの調査結果では、1人あたり家賃の中央値が過去5年間で33%上昇し、6月には月2748元に達したという。これは同市の所得中央値の58%に相当する。こうした住宅コストの上昇によって、中国の若年労働者は市の周縁部に住まざるを得ず、ストレスの多い長時間通勤を強いられる場合が多い。

このような経済的圧迫は、中国若年層の晩婚化にもつながっている。

東部の主要都市である南京では、公式統計による初婚年齢の中央値が、2012年の29.9歳から、昨年は31.6歳に上昇した。

<高まる期待>

「喪」の世代と対照的なのが、それ以前の数十年間、中国経済が2桁成長を続けていた時期に成人した世代の楽観主義である。この世代は、より厳しい時代を経験した「吃苦」世代である両親・祖父母にとっては夢でしかなかったようなキャリア展望と生活向上への期待をモチベーションとしてきた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

インドネシア中銀本部を家宅捜索、CSR不正疑惑

ワールド

ロシア軍の放射線・化学・生物兵器責任者が死亡、モス

ワールド

韓国当局、大統領府捜索再び試みる 尹氏側は内乱罪成

ビジネス

日経平均は3日続落、次第に軟化し後場マイナス圏 ア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:アサド政権崩壊
特集:アサド政権崩壊
2024年12月24日号(12/17発売)

アサドの独裁国家があっけなく瓦解。新体制のシリアを世界は楽観視できるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが物議...事後の悲しい姿に、「一種の自傷行為」の声
  • 2
    【クイズ】アメリカにとって最大の貿易相手はどこの国?
  • 3
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「TOS-1」をウクライナ軍が破壊する劇的瞬間をカメラが捉えた
  • 4
    ウクライナ「ATACMS」攻撃を受けたロシア国内の航空…
  • 5
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 6
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 7
    メーガン妃は「ブランドのバッグを喜んで受け取る人…
  • 8
    ウクライナ侵攻によるロシア兵の死者は11万5000〜16…
  • 9
    爆発と炎上、止まらぬドローン攻撃...ウクライナの標…
  • 10
    電池交換も充電も不要に? ダイヤモンドが拓く「数千…
  • 1
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 2
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達した江戸の吉原・京の島原と並ぶ歓楽街はどこにあった?
  • 3
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式多連装ロケットシステム「BM-21グラート」をHIMARSで撃破の瞬間
  • 4
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 5
    男性ホルモンにいいのはやはり脂の乗った肉?...和田…
  • 6
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 7
    電池交換も充電も不要に? ダイヤモンドが拓く「数千…
  • 8
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 9
    ウクライナ「ATACMS」攻撃を受けたロシア国内の航空…
  • 10
    「男性ホルモンが高いと性欲が強い」説は誤り? 最新…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 9
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 10
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中