東南アジア、「中国依存」で払う高いツケ
9月8日、フィリピン、マレーシア、タイなど東南アジア諸国は、中国経済の好調を支えに高成長を謳歌している。しかし中国への依存を深めるにつれて中国政府の意向に逆らいにくい立場に立たされており、政治的あるいは経済的に「ツケ」を払うことになるかもしれない。タイ首都バンコクのビジネス街で2015年5月撮影(2017年 ロイター/Chaiwat Subprasom)
フィリピン、マレーシア、タイなど東南アジア諸国は、中国経済の好調を支えに高成長を謳歌している。しかし中国への依存を深めるにつれて中国政府の意向に逆らいにくい立場に立たされており、政治的あるいは経済的に「ツケ」を払うことになるかもしれない。
中国は資本流出を食い止めようと躍起だが、それでも東南アジアに資金を投入しており、習近平国家主席が提唱する現代版シルクロード構想「一帯一路」に絡むインフラプロジェクトがその大部分を占める。
また中国人旅行者が東南アジア各地の観光地に押し寄せているほか、対中貿易も大幅に増加している。
ロイターの試算によると、インドネシアとマレーシアの対中輸出は上半期に40%以上増加。タイとシンガポールは約30%、フィリピンは20%以上増えた。
中国との経済的結びつきは東南アジア諸国にとってありがたいものだが、中国との間で南シナ海の領有権問題を抱えるベトナムやフィリピンにみられるように、政治的な悩みも生む。
中国が我を通すために経済面から圧力を掛けるリスクは増している。IHSマークイットのアジア太平洋チーフエコノミスト、ラジブ・ビスワス氏は「東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国の対中輸出増加で、地政学的リスクに対して脆弱になる恐れが高まっている」と話す。
<苦境に陥った韓国>
東南アジア諸国は中国との関係を考える上で韓国の例を見るとよいだろう。中国は米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備に反発。その結果、韓国を訪れる中国人旅行者は激減し、余波はロッテ・グループなど中国に進出している韓国企業にも及んだ。
ビスワス氏は「韓国の事例は、中国との間で経済的な相互依存が拡大すると地政学的な面でいかに中国に屈しやすくなるのかを明確に示している」と述べた。
フィリピンも海洋の領有権問題で中国に盾突いた後、2012年に中国から果物の禁輸措置を食らっている。フィリピンのドゥテルテ大統領が中国に対する姿勢を和らげたことから、禁輸措置は昨年にやっと解除された。
リスクコンサルタント会社、コントロール・リスクスの東南アジアヘッドのデーン・チャモロ氏は「タイの観光業やフィリピンのバナナ輸出など中国の依存度の高いセクターはいずれも打撃を受けやすい」と指摘。「中国にとって流れを止めたり、邪魔したりするのがどれほど容易か簡単に分かる」とした。