米軍アフガン増派、「勝利なき戦争」という大誤解
駐留米軍は治安維持に徹するのが得策 Omar Sobhani-REUTERS
<アフガニスタンの紛争は「戦争」ではなく警察活動。決定的勝利ではなく相対的安定を目指すべきだ>
8月21日、ドナルド・トランプ米大統領は増派を含む新たなアフガニスタン戦略を発表し、「アメリカ人は勝利なき戦争にうんざりしている」と語った。厭戦ムードはいつか勝利の瞬間がやって来るはずという期待の裏返し。だがそうした期待はアフガニスタン紛争の本質を誤解している。
アフガニスタンでは01年後半のタリバン政権崩壊以来、アメリカとその盟友が戦略的な問いを突き付けられてきた――勝利とは何か、つまり、これがどう決着するのか。そもそも「これ」は何なのか。確かにアフガニスタンは一種の戦争状態にあるが、勝利の決定的瞬間が見込める代物ではない。むしろ武装した治安維持活動と呼ぶべきだろう。
アフガニスタンでは治安部隊は戦場での証拠集めに忙しい。武器、空になった弾丸ケース、簡易爆発物(IED)の部品、文書、携帯電話、爆薬を使った痕跡......。反政府勢力の戦闘員を拘束して裁判にかけても証拠がなければ有罪にできないからだ。しかも身柄を拘束しても、賄賂で裁判の前に自由の身になることが珍しくない。
内戦と国家間の戦争との区分は単純明快だ。それだけに、内戦にも他国との戦争のような決定的勝利を期待するとすれば驚きだ。
内戦における治安維持は周知のとおり継続的な活動だ。勝利の瞬間があるわけではなく、目的はむしろ相対的な「安定」の実現と維持であって、それは常に一時的なものでしかない。
アフガニスタン紛争を武装した治安維持活動と考えるのは歴史的に見ても理にかなっている。北西辺境州と呼ばれた現在のパキスタンとアフガニスタン国境に挟まれた無法地帯がイギリス領インドの一部だった1849~1947年、一部のパシュトゥン人勢力がこれに反発。イギリスは治安維持のために大規模派兵を繰り返した。
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地道な活動がカギを握る
イギリスによる鎮圧作戦は1900年以前だけで60回。重要なのはこの1世紀に及ぶ武装した治安維持活動に終わりがなかったことだ。1947年は英軍が撤退したにすぎず、今もパキスタンの多くの部隊がこの地域の治安維持に当たっている。
「勝利」は戦争の言葉であって、それをアフガニスタンの内戦に無理やり押し込めば誤解を招きやすい。内戦の結果は決定的勝利ではなく相対的安定という観点で評価されるのが普通だが、場合によっては「決定的勝利」もあり得る。反乱勢力が強大で、通常の軍隊を派遣して戦争と区別がつかなくなった場合だ。